人と人との関係は「お金で買える」ものなのか(写真:イメージマート)
「愛や友情、家族の絆は、お金で買えない大切なもの」であるはずが、お金がないことを理由に人との縁が切れるのも事実だ。では、大切な人はお金で“買える”のか、そしてそれは“許されること”なのか──お金と人間関係に関する多数の著書を持つ作家・橘玲さんと、人気ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔さんが語り合った。【前後編の前編】
お金で“愛を買う”ことを隠さない人たち
橘:世の中では、「愛はお金で買えないし、買ってはいけない」ということになっていますね。それはなぜか。最初に私が考える「人間関係のイメージ図」を提示しましょう。
まず自分自身を中心に「愛情空間」の小さな円が取り囲む。その外に「友情空間」の円があり、さらに外側に、人々がお金を使ってやりとりする「貨幣空間」の円があります。中心に近いほどかけがえのない相手で、そのプライスレスな人間関係に「お金を用いた取引」すなわち貨幣空間の論理を持ち込んではいけないというのが、人類社会の普遍的な認識だと思います。
山崎:すると、「恋人はお金では買えない」となるのですか?
橘:愛と友情は、定義上「お金では買えない」からこそ大きな価値を持つわけです。それにプライスをつけると、八百屋で売られている野菜や果物と同じになってしまう。
例えば、初めてのセックスの後に男性が女性に10万円の指輪をプレゼントしたら喜ばれるでしょうが、一万円札を10枚渡すととんでもないことになる。
山崎:金額的価値は同じでも、「私の愛をお金で買ったのね!」と怒られますね。
橘:その通りです。値段がついたらもはや愛ではなくなってしまう。
ところが最近は、お金で“愛を買う”ことを隠さない人たちが現れました。その典型が「ホス狂い」と呼ばれる、ホストに貢ぐ女性たちです。わざわざデートを重ねて相手を見極めるのはまどろっこしいし、どうせ男はウソをつく。だったら、お金さえ払えば「愛している」と言ってくれるホストの方がコスパやタイパがいい、というのが彼女たちの論理のようです。