「愛」と「友情」はお金を嫌う
“愛や友情はお金で買えないもの”であるはずが、お金がないことを理由に人との縁が切れることがあるのも事実だ。では、大切な人はお金で“買える”のか、そしてそれは“許されること”なのか──お金と人間関係に関する多数の著書を持つ作家・橘玲さんと、人気ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔さんが語り合った。【前後編の後編。前編から読む】
「その場限り」の友情が増えた
山崎:橘さんが提示された人間関係の図では、「友情空間」に位置する友人もお金では買えません。
橘:友情空間に露骨にお金が介在すると、「対等である」という友情の前提が崩れてしまいます。職場の飲み会でも、同期は割り勘なので友人関係になれますが、払う金額が違う上司と部下では、なかなか友達になれません。
山崎:確かに友人関係は対等でなければいけません。年収100万円の人がホリエモンの親友にはなれないように(笑い)。でもそれは収入差別ではなく、ビジネスでも趣味でも、感覚が近い人の方が共感しあえるからでしょうね。
橘:実際、友達と飲みに行くたびに片方が奢っていたら、友情は壊れてしまうでしょう。これは夫婦関係も同じで、「おれが稼いで食わせてやってるんだ」と言う夫に、「私の家事は時給2000円の価値があるのよ」と妻が言い返したら、もはや対等な夫婦関係ではなく、単なる主人と家政婦の関係に変わってしまいます。だからこそ、家庭にお金を持ち込まないようにしなければならないわけです。
山崎:無理のない範囲で「出せる人は出す、出せない人は今度出す」といった感じで、バランスのいい関係を築ければいいのですが……食事のたびに「おれが全部持つよ」を繰り返したら、依存関係になり対等ではなくなりますね。
やっぱり私は、友情においてもお金以上に「経験と感動」が重要だと考えます。過去に本当にお金に困って、誰にも相談できずにいたことがあるのですが、のちにそれを知った友人から「お前の人生が前に進むためならいくらでも貸したのに」と告白されて感動した覚えがあるのです。その友情が本物なら、お金に関係なく維持できるはず。結局は友情においても、互いの心情がものを言うのです。
橘:それは素晴らしい話ですね。そのかたと山崎さんの友情あってのやりとりです。ただ最近は“その場限りの友情”も増えてきているようです。
友情とは、対等な関係で、共に時間を過ごすことから生まれますが、現代人は忙しすぎて、仕事と愛情空間のために時間を使うと、友情のための時間資源が残らなくなってしまう。
そこで、例えばフットサルをするにしても、チームをつくって対戦するのではなく、知らない者同士が1人でフットサル場にやってきて、人数の足りないコートに入ってプレーし、試合後はハイタッチして解散するだけで、名前も知らないそうです。
山崎:「友情」はお金で買えなくても、その場だけの「友人関係」はもはや、参加費を払えば簡単に手に入るようになってきていると。大きな変化を感じますね。