不動産情報サイトでの新居を妄想するのと似ている
転職サイトは、「特に本気で転職先を探すためのものでなく、仕事がイヤになったときに見るところ」という人もいる。IT企業勤務の40代女性・カスミさんは、「10年近く“転職サイトサーフィン”しています」と言う。
「“仕事イヤイヤ期”になると、転職サイトを見たり、新たに登録したりしがちですね。いろんな仕事があるんだなと思うと、単純に気分転換になります。ただ、年収や福利厚生などがよいとしても、その分多く働くのもイヤ。面接を受けるのも面倒です」
カスミさんの周囲の同僚や大学同期は、転職して年収やスキルアップの希望を叶えた人もいるという。だが、カスミさんは「“タラレバ”を楽しむので十分」だと言う。
「不動産情報サイトで引っ越し先の新居を妄想するのと似ています。転職サイトは、もし芸能事務所でマネージャーになったら、もし丸の内勤務だったら……と空想を広げて楽しむツールなんです(笑)」(カスミさん)
安易な転職を防ぐ「抑止力」に
安易な転職を防ぐ「抑止力」として活用している人もいる。建設会社勤務の30代男性・カズヤさんは、これまで6度の転職をしてきた。その都度職種も異なるため、それぞれの仕事の経験年数は浅い。そんなカズヤさんは、「これ以上、転職をしないために転職サイトは登録したままにしています」と語る。どういうことか。
「現在の会社で働き始めてから1年、またどこか違う会社に動きたくなりました。今度こそ、ここで骨を埋める覚悟で入ったのに……。でも転職サイトからは、希望職種とはまったく関係ないスカウトばかりが来ます。年齢も年齢ということもありますし、それ以上に自分のキャリアが微妙なんだということを痛感します。キャリアを高めて転職という気持ちよりも、現職を大事にしようという気持ちというか」
転職サイトに登録したからといって、転職活動をするわけではない。一見、登録したままにしているように見えても、当事者にとってはさまざまなメリットがあるようだ。