会社の定める「供用約款」を見ても「高速道路の設置又は管理に瑕疵があったために利用者に損害を生じたときは、会社は、これを賠償する」とあります。しかし、例外として渋滞による遅滞については補償しないとされ、渋滞の原因については限定がありません。不特定多数の者との間で画一的な契約内容にするのが合理的な定型取引では、業者が約款によることを予め表示していれば契約の内容になります(定型約款)。
ゲートには供用約款による旨の表示があると思いますので、渋滞による損害を免責する「供用約款」が適用されます。そのため、道路会社に契約違反を理由とした補償請求はできません。
もっとも、供用約款にはいかなる場合にも渋滞を免責するとはされていません。そこで会社に、個々の利用者に対する関係で、システム故障の発生や発生後の渋滞回避のための対応措置についての過失があったことが証明されれば不法行為責任が考えられます。ただし、利用者は渋滞が発生しうることを覚悟して利用している現状を考えると、会社の故意、又は重過失による行為で渋滞が発生したなど、利用者の被害が受忍限度を超えたといえる場合ではない限り、補償を受けるのは難しいと思います。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2025年5月30日号