多くの追い風を受ける空調業界(写真:イメージマート)
空調設備工事業界の受注環境が全体的に非常に好調だ。各社の売上は増加基調にあり、企業努力や価格適正化への動きにより採算の改善も進んでいる。その結果、多くの空調関連企業で利益率が向上し、業績が大幅に伸長する状況だ。今回は、空調業界で好決算を出している企業をピックアップし、個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が解説する。
空調業界が好調である主な要因
近年、日本の建設業界はコロナ禍からの緩やかな経済回復を背景に、建設投資が増加基調にある。政府の公共投資が堅調である上、企業の設備投資も拡大し、大都市圏の再開発や工場新設など大規模プロジェクトの動きが活発化している。実際、国土交通省の見通しでは2024年度の建設投資額は前年度比+2.7%増の約73兆円に達するとされており、建築工事のボリューム拡大が空調設備業界への追い風にもなっている。また、増加するインバウンド受け入れのためのホテルの改装や、半導体や電気・電子関連の製造業による国内投資が旺盛で、工場や研究施設向けの空調需要も高まっている。
同時に、日本全体で省エネ・脱炭素ニーズの高まりが空調業界に大きな影響を与えている。政府は2050年カーボンニュートラル実現に向け、既存建築物の断熱改修や高効率空調機器の導入を支援する補助事業を展開しており、企業や施設に対してエネルギー効率の高い設備への更新を促進している。ビルのZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化や省エネ法の改正により、オフィスビルや商業施設でも老朽した設備の更新ニーズが増加し、空調設備工事各社にはリプレース案件(省エネ改修工事)の受注機会が増えている。
また、環境意識の高まりから空調設備工事業者自身もエネルギー効率やカーボンフットプリント(商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して温室効果ガスの排出量を把握すること)を意識した提案を強化しており、施主側の需要喚起につながっている。
このような背景により、空調設備工事業界全体の受注環境は非常に好調だ。旺盛な需要に支えられ各社の売上は増加基調にあり、各社の企業努力や価格適正化への動きにより受注工事における採算の改善も進んでいる。
その結果、多くの空調関連企業で利益率が向上し、業績が大幅に伸長する状況となっている。ここでは空調関連銘柄から業績成長著しい注目企業の例を紹介しよう。