なぜ形が変わったのか
日本では、かつて多くの電車で菱形のパンタグラフが使われていました。いっぽう現在は、シングルアーム形のパンタグラフを採用した電車が増えています。
なぜこのような変化が起きたのでしょうか。それは、技術の進歩によってパンタグラフの小型軽量化や部品点数の削減が実現したからです。つまり、構造の改良を重ね、実績を積んだ結果、シングルアーム形を採用する例が増えたのです。
新幹線のパンタグラフ
最後に、新幹線のパンタグラフについてふれておきましょう。
新幹線では、初代電車(0系)で下枠交差形のパンタグラフが使われていました。ただし、電車が高速で走行するゆえに、パンタグラフ付近で大きな集電音や風切り音が発生していました。このため、これらが沿線に伝わる騒音の原因になっていました。
いっぽう現在は、新幹線のほぼすべての電車で、シングルアーム形パンタグラフが導入されており、騒音が出にくいように工夫されています。
E7/W7系新幹線電車のパンタグラフ。筆者撮影
なお、現在山陽新幹線を走っている一部の電車(500系)では、登場当初T形(翼形)と呼ばれるパンタグラフが使われていました。これは、垂直の筒が舟体を押し上げるタイプです。なお、現存する500系では、シングルアーム形パンタグラフが採用されています。
500系新幹線電車で使われたT形パンタグラフ。JR西日本博多総合車両所一般公開時に筆者撮影
【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。「川辺謙一ウェブサイト」も随時更新。