豊田通商の広報部担当者はこう説明した。
「良好な食味を保って多く収穫できる品種として、しきゆたかのタネを当社から農家さんにお売りし、作っていただいたお米を買っています。契約農家さんは200件ほどで、2024年産は秋田、茨城、岐阜、三重、兵庫あたりを中心に全国で広く生産しています。パックご飯や冷凍米飯、外食産業向けに、ブレンド米の原料の一部として利用されている場合が多いと把握しています」
さらに豊田通商グループでは、子会社の豊通食料が5月14日、三井物産の子会社で米穀事業に強い三井物産アグリフーズの買収を発表。6月2日付で完全子会社化した。
その狙いについて前出の広報担当者は、「(子会社である豊通食料と)豊田通商の米穀事業との将来的な連携を視野に入れていきます」と話した。
主要大手商社が農家との直接取引に動き始めている──。その動向を探るため、大手8社にアンケート調査を行なった。
直接取引を行なっている場合、産地や取引価格、仕入れたコメの販売用途などを尋ねたが、三菱商事は「取引に関することなのでメディアへの回答は控えております」(広報部担当者)、住友商事は「回答を控えたいと思います」(広報部担当者)とするのみ。
三井物産、丸紅、双日、兼松は、直接取引について「当該事業はございません」とする趣旨の回答だった。
伊藤忠商事と豊田通商は前述の通りだ。
【プロフィール】
窪田新之助(くぼた・しんのすけ)/ノンフィクション作家。1978年福岡県生まれ。明治大学卒業後、2004年に日本農業新聞に入社し、2012年よりフリーに。著書に『データ農業が日本を救う』(インターナショナル新書)、『農協の闇』(講談社現代新書)など。2024年、『対馬の海に沈む』(集英社)で第22回開高健ノンフィクション賞を受賞。
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※週刊ポスト2025年6月20日号