小泉進次郎・農水相が打ち出した施策はコメ価格下落につながるのか(時事通信フォト)
5月12日から18日までに全国のスーパーで販売されたコメ5キロあたりの平均価格は過去最高となる4285円となるなど、終わりの見えない「令和の米騒動」。「コメを買ったことがない」の失言で江藤拓農水相が辞任し、後任には小泉進次郎氏が就任したが、はたしてコメ価格は落ち着くのか。緊急対策として政府備蓄米の新しい放出方式を打ち出したが、そこには大きな落とし穴も潜んでいる──。イトモス研究所所長・小倉健一氏が解き明かす。
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コメ価格が記録的な高騰を続け、国民の食卓に重くのしかかる中で、新しく農林水産大臣に就任した小泉進次郎氏が緊急対策として打ち出した政府備蓄米の新しい放出方式が注目を集めている。これまでの競争入札を取りやめ、国がスーパーなどの大手小売業者を直接選んで売り渡す随意契約という仕組みである。
農水省が公表(5月26日11時)した資料によると、この新しい方式の対象者は年間1万トン以上のコメを扱う大手小売業者(見込み含む)であり、POSデータの情報提供への協力も求められる。売り渡される数量は令和4年産米20万トンと令和3年産米10万トンの合計30万トンであり、買戻し条件は付されない。随意契約の方法としては、国が提示した販売価格(売渡価格)で販売し、8月までに消費者に提供される分を申し込み、毎日先着順で受け付け、契約・販売が行われるという。売渡価格は年産によって異なるが、加重平均では60キロあたり税込み1万1556円と設定されている。
資料の注釈には、この価格が一般的なマージンを考慮し、既存在庫とブレンドしないと仮定した場合に、小売価格が5キロあたり税込み2160円程度となる水準であると明記されている。早ければ6月上旬にもこの価格帯の備蓄米が店頭に並ぶ見込みだという。
このような、国が直接売り渡し先を選び、具体的な小売価格目標を見据えた価格を設定して市場に介入するやり方には、多くの懸念も寄せられている。見かけ上の価格引き下げが、長期的に見て日本の農業やコメ市場に歪みをもたらさないと言えるのだろうか。進次郎農水大臣の手腕が、一時的な喝采を浴びるだけのパフォーマンスに終わらず、真の意味で日本の農政を改革する突破口となるのかどうか、その道のりには多くの困難と不確実性が潜んでいる。