激辛の酸辣湯麺とチャーハンを前に思わず動きが止まった若き日の筆者
思い返せば私と店の“辛さ対決”の原点は、千葉県南船橋の台湾料理店「慶龍」に遡ります。この店の酸辣湯?とチャーハンのセットをいつも頼んでいたのですが、両方とも辛くしてもらっていた。
会計の際、「もっと辛くできますか?」と聞いたら「次はもっと辛くするよ」と言われて毎月1回通う際、辛くしてもらったのですが「まだ余裕っすよ!」と言った次に訪れたらまったく歯が立たなかった……。酸辣湯麺とチャーハンを目の前にして凍ってしまうほど唐辛子の破壊力がすごかったのです。
結局半分ほど残し、会計の際には「申し訳ありません、今後『少し辛い』ぐらいに抑えて注文します」と謝罪したわけです。多分、店としても「全然辛くないよー!」という私の発言に対し「この野郎! じゃあ、お前をギャフンと言わせてやる」という気持ちはあったのでしょう。そこで本気の酸辣湯?とチャーハンを出してきたのです。
この2品に撃沈する姿を見て同行者も楽しそうでしたし、店主も「ガハハハハ、ワシの勝ちや!」と思うなど、一つの娯楽としては成立していると思います。しかし、このバカげた辛さ勝負をしなければキチンと全部食べられたのだろうな……、ということは今でも思います。というわけで、積極的に辛さ勝負はしないようにしているのですが、時に「麺屋なら」の12辛のような勝負をしてしまう愚かな自分がおります。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。