成功するにはターゲティングとマーケティングが必須
ところで私はとても有名な社長と知り合いで、頻繁に会っていたのですが、あるときから一人の男性が同行するようになりました。てっきり社員だと思っていたら、どうも占い師らしい。食事のときも同席して、あれこれとアドバイスをしています。それがとても優しく、そして包み込むような話し方なんですよね。
彼は私にもアドバイスをしてくれました。「何月何日の何時何分に家を出て、西の方向に行って、方違神社(大阪府堺市堺区)に行って、体に染み付いている方向感覚を矯正してください」とか「何月何日に宝くじを買ってください」とか。なお、仕事上のつながりだからと思って、方違神社に行きましたが、まだ効果は実感できず、20万円相当の宝くじはほぼすべて外れました。しかし、その占い師にクレームを伝えたことはありません。
この経験から、占い師として成功する人は、そのコミュニケーション能力の高さゆえだと思いました。というのも、方違神社の紹介も、私が仕事のトラブルについて愚痴をこぼしたときに出てきた具体的なアドバイスでした。彼は私の話をじっくりと聞いてくれました。占い師は私の表面的な言葉の深層に、とにかく助けてほしいという叫びを聞いたのかもしれません。
さらに20万円の宝くじの話題になったときも、「そのうち結果としてお金が入るようになりますよ」といっていました。私は外れた後に、「あー、こんなことやったって意味ないよなあ。宝くじなんて当たるはずがない。しっかりと仕事をしなきゃ」と思い、仕事にそれまで以上に打ち込むようになりました。だから、そこまで占い師が計算して、私に「結果としてお金が入るようになる」といったのではないか……と思えるくらい、私を見透かすような目をしていたのです。
さて、占い師は、相談を受ける内容がビジネス関連か、恋愛関連かによっても話す内容がかなり異なります。そのため、しっかりとターゲティングをし、その知識を増やし、焦点を絞る必要があります。また彼は口コミで企業経営者からの仕事を増やしていましたが、大きな決断をしなければいけない経営者を紹介してもらっているといっていました。なるほど経営者は孤独で、一人で大きな決断をしなければなりません。幹部と心が通じていなければなおさらです。そういう相手を狙うのは、企業のマーケティングと同じです。
経営者に限らず、肉親を失ったとき、家族が受験のとき、大失恋をしたときなど、誰かにすがりたいタイミングは誰にでも多々あります。そこで占い師は、丁寧に話を聞いて具体的なアドバイスをすることで、個人客であればリピーターを着実に増やしたり、企業経営者であれば専属で契約を結んだりするわけです。
※坂口孝則著『駄菓子屋の儲けは0円なのになぜ潰れないのか?』(SBクリエイティブ)から一部抜粋して再構成
【プロフィール】
坂口孝則(さかぐち・たかのり)/経営コンサルタント、講演家。セミナー会社経営。大阪大学卒業後、電機・自動車でのサプライチェーン・調達業務に従事。現在、未来調達研究所株式会社に所属。同社にて、多くの無料教材を提供中。コンサルティングにくわえて、企業講演、各メディアでの出演・執筆を行う。主な著作に『調達・購買の教科書』『製造業の現場バイヤーが教える 調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『営業と詐欺のあいだ』『買い負ける日本』(幻冬舎)、『駄菓子屋の儲けは0円なのになぜ潰れないのか?』(SBクリエイティブ)等がある。