100均の取引先は「買いたたきされている」のか?
なお中国で100円均一商品を生産・販売する義烏、杭州らの都市は、経済成長とともに人件費が上がっています。これにより、確実に原価はギリギリになっています。実際に小資本の100均は閉店も相次いでいます。もう100均がどこでも栄華を誇る時代ではありません。すでに大手が実践しているように、100円以外の中価格帯を用意してミドル層をとらえるしかありません。
現在、100均と誰もが認識しているものの、実際に並んでいるのは300円、500円、1000円といった商品ばかりです。この業界は規模の拡大とともに、生産ロットも大きくなるしコストも抑えられます。いわゆるボリュームディスカウントという考えですね。100個を注文するよりも1万個を注文するほうが、取引先としてもコストを抑えられます。また100個だけを作るよりも、1万個を生産したほうが、材料費は安くなるし、労務費は抑えられるし、設備稼働率は上がるし、金型費の配賦も下がるし、物流費も下がるし、なにより取引先の経営が安定します。だから調達する側が、買いたたきをしているとよくいわれますが、現実的には発注量が多い調達企業と取引をしたいと思っている人たちが多数いるというのが実情です。
さらに取引先にとってみれば、たくさん買い取ってくれるおかげで在庫リスクを避けることが可能です。また、100均は全国に店舗を展開しており、すでに確立された販路を持っているため、取引先側は自社で広告を打つ必要がありません。日用品を求める来店客が多く、衝動買いや「ついで買い」が発生しやすいため、他業態に比べて商品が回転しやすく、次なる売上につながる利点もあります。
※坂口孝則著『駄菓子屋の儲けは0円なのになぜ潰れないのか?』(SBクリエイティブ)から一部抜粋して再構成
【プロフィール】
坂口孝則(さかぐち・たかのり)/経営コンサルタント、講演家。セミナー会社経営。大阪大学卒業後、電機・自動車でのサプライチェーン・調達業務に従事。現在、未来調達研究所株式会社に所属。同社にて、多くの無料教材を提供中。コンサルティングにくわえて、企業講演、各メディアでの出演・執筆を行う。主な著作に『調達・購買の教科書』『製造業の現場バイヤーが教える 調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『営業と詐欺のあいだ』『買い負ける日本』(幻冬舎)、『駄菓子屋の儲けは0円なのになぜ潰れないのか?』(SBクリエイティブ)等がある。