「自分は投資の天才だ」と勘違いしていた若い頃を、笑って振り返る余裕ができた天間氏
高卒で大手電機メーカーに就職し、23歳で投資を始めた天間友弘氏。2016年に40歳でFIRE(=経済的自立と早期リタイア)を達成して専業となり、翌年資産1億円を突破したという。ただ、その歩みは決して平坦ではなかった。現在の資産は数億円だといい、株式投資のみならず債券、不動産、仮想通貨、ヘッジファンドなど、幅広い対象に投資しているという天間氏が資産を築きあげるキッカケとなったのはIPO(新規公開株)投資だった。
「利益が出ても口座から出金はしません」
ITバブルが弾けて一時は資産を大きく減らした天間氏はIPO銘柄に着目するようになった。IPO銘柄を手に入れるには、証券会社に申し込み、抽選で割り振られるのを待つわけだが、「新規に口座開設した顧客が優遇される傾向があることを知り、片っ端から証券会社に口座を開いてIPOを申し込んだ」(天間氏、「」内は以下同)という。
とはいえ、誰にどれだけ配分するかは証券会社の裁量に委ねられるため、「そう簡単に手に入れられるものではない」わけだが、意外なコツがあるという。
「証券会社からIPOを優先的に回してもらうには、新規口座を作るやり方のほかに、口座にそれなりの額の資金を入れておくことがポイントだと思います。また、証券会社の担当者の営業成績を考えてあげるのも大切です。たとえば、私はIPOで利益が出ても口座から出金はしません。逆に、その証券会社の投資信託を買います。
またある時など、公開直前に問題が起きて購入のキャンセルが出て担当者が売れずに困っているのを察して、損を覚悟で買いました。時間をかけて証券会社との関係を深めていくことが重要なのです。手数料が安いという理由でネット証券を利用する人が多いと思いますが、IPOに関しては私は今も証券会社の店頭取引が中心です」
最初こそ躓くこともあったが、IPO投資を始めて6年余りで資産を4000万円まで増やした天間氏。だが、その後に起きた2008年のリーマン・ショックで再び蹉跌を味わうことになる。
「あの頃はまだ若かったので勘違いしていたんですね。『自分は投資の天才だ』『このままIPOだけで生活できる』と思い込んでいて、脇が甘くなってリスクを取り過ぎていました。同じ時期にFX(外国為替証拠金取引)も始めていた。異なる通貨ペア間の金利差で利益を出すスワップ投資が人気で、アイスランドのクローナの金利は2008年に15%を超えていました。『これはすごい』とレバレッジも掛けて大きなポジションを持っていたのです。
そのタイミングでサブプライムローン問題とリーマン・ショックが起きて、全面的な『円高外貨安』の波に飲まれてあらゆる外貨が円に対して大きく下落しました。アイスランドは財政破綻してクローナも暴落、とんでもないことになりました。4000万円あった資産は2000万円に半減しました」