*11:01JST クエスト Research Memo(1):創業以来60年連続黒字のITソリューションカンパニー
■要約
1. 会社概要
クエスト<2332>はシステム開発及びITインフラサービスを中核とする独立系の情報サービス企業であり、半導体・製造・金融・エンタテインメント・情報通信など多様な業種に向けてソフトウェア開発やシステム運用、IT基盤構築を提供している。特に半導体製造や設計プロセス領域に強みを持ち、エンジニアリングソリューションにも注力している。企業理念は「技術を探究し、価値を創造し、お客様とともに成長する」、パーパスは「技術と創造力で人と社会の安心と幸せを支え続けます」である。ISMS認証やプライバシーマーク取得など情報セキュリティにも力を入れており、設計から運用までを一貫して提供できる体制が競争力の源泉となっている。2002年に東京証券取引所(以下、東証)JASDAQ上場後、現在は東証スタンダード市場に上場し、創業以来60年にわたる連続黒字経営により高い財務安定性を維持している。アライアンスやM&A、拠点拡大により体制を強化しており、2023年には本社をmsb Tamachi田町ステーションタワーNに移転した。今後も持続可能なITソリューション企業としての安定成長が期待される。
2. 2025年3月期の業績概要
2025年3月期における連結業績は、売上高14,936百万円(前期比5.0%増)、営業利益1,055百万円(同5.8%増)、経常利益1,112百万円(同4.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は767百万円(同10.3%増)であった。売上高・営業利益・経常利益は過去最高を更新、売上高は12期連続、営業利益は7期連続過去最高を更新している。重点強化領域の主要顧客である半導体分野顧客(イメージセンサ、メモリ)、社会課題解決領域の顧客である移動・物流分野顧客及び公共・社会分野顧客における新規案件受注の拡大等が寄与した。
3. 2026年3月期業績見通し
同社は中長期ビジョン「Quest Vision 2030」の第2期中期経営計画(2024~2026年度)に基づき、「高収益体質への変革」及び「成長に向けた未来投資の実行」を2本柱として各種施策を展開している。その具体的施策として、2026年3月期第1四半期より(株)セプトを完全子会社化した。セプトはソフトウェア開発及び保守管理業務、ネットワークエンジニアリング業務を展開する企業であり、2025年4月現在で従業員106名を擁する。この取り組みにより、エンジニアリソースの拡充を図り、より高度な顧客課題の解決及び安定したサービスの供給体制を確立する。なお、2026年3月期の連結業績予想は、売上高16,860百万円(前期比12.9%増)、営業利益1,180百万円(同11.8%増)、経常利益1,240百万円(同11.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益845百万円(同10.1%増)を見込んでいる。
4. 第2期・中期経営計画の公表
同社は、2020年度(2021年3月期)に策定した中長期計画「Quest Vision 2030」に基づき、2024年度(2025年3月期)より第2期中期経営計画を始動させた。第1期(2021年度~2023年度)ではM&Aを通じた事業基盤の拡大により売上目標を上回る成果を上げた一方で、資本コストや株価を意識した経営には課題が残された。第2期では、資本効率を踏まえた収益性の向上、事業構造の変革、企業体質の強化に加え、人財及び技術への投資を通じて成長を加速する方針である。従来からのICTソリューションによるコアサービスの深耕に加え、知的資産を活用したソリューションサービスによるビジネスボリューム拡大を成長ドライバーと位置付ける。2025年4月のセプト子会社化により、成長戦略の下支えとなるリソース確保が進んだことでソリューションサービスへの展開にも期待がかかる。第2期では、「2030年度の飛躍に向けた基盤の強化と着実な成長」を主眼とし、3つの重点戦略を掲げている。第1に、半導体・製造を中心とする重点強化領域、金融や情報通信などの安定成長領域、公共や移動・物流などの社会課題解決領域にリソースを最適配分する「顧客産業・ポートフォリオ戦略」。第2に、工数依存型から高付加価値型への転換を図る「事業構造戦略」。第3に、多様な人財が活躍できる制度改革と育成投資を進める「人財戦略」である。これらを軸に、持続的な成長と資本市場からの信頼確保の両立を図り、2027年3月期には売上高168億円、営業利益率8.0%、ROE11%超の達成を目指す。
■Key Points
・創業以来、60期黒字決算の優良企業で直近12期連続増収中
・半導体中心に幅広い産業・社会課題に対応するサービスを展開
・中長期ビジョンで企業価値250億円を目指し着実な戦略実行
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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