「デジタル温泉手形」開発に総額16億円
発端は石破首相が掲げた「地方創生2.0」だ。毎年ほぼ1000億円だった地方創生交付金を今年度は約2000億円に倍増させ、第2世代交付金として地方にバラ撒いた。951自治体の2090件の事業が国の交付金対象に採択されている。
そこには「これが地方創生の列島改造?」と税金の使い方に疑問を感じる事業が数多く並ぶ。
島根県浜田市は「美肌産業の形成」を掲げて地元の美又温泉の日帰り入浴施設の整備、2次元バーコードを読み取って入浴施設などの割引を受ける「デジタル温泉手形」開発などに総額約16億円を充てる。
本誌・週刊ポスト記者が訪ねたのは土曜日の午後だったが、温泉街にはほぼ人影が見えない。日帰り入浴施設を訪れた市内在住の80代女性常連客に話を聞いた。
「ご覧の通り利用者は高齢者がほとんど。デジタル温泉手形と言われても、みんな年寄りだからねぇ。交付金なんて使う意味があるのかどうか」
「インバウンド観光推進」を名目に市長の外遊費用も交付金で賄われる。
島根県松江市は「フランス現地における市長トップセールス」(1885万円)などインバウンド推進に約6696万円を使う。だが、松江市の資料では同市の外国人宿泊数は1位台湾、2位韓国、3位中国、4位アメリカで、フランスは5位。増加率を見てもアジア諸国が高い。
なぜ市長がフランスに外遊し、費用を国に出させるのか。松江市に聞くと、「フランス人は歴史文化伝統への関心が深いので、観光資源が豊富な松江市とは親和性が高い。現地で旅行会社やメディアなどへのセールスイベントを実施することで宿泊者数の増加が見込める」(国際観光課)と答えた。
NHKの朝ドラや大河ドラマに便乗した観光誘致事業まで交付金がアテにされていた。
高知県は朝ドラ『あんぱん』の放送に合わせた博覧会開催や観光施設の「磨き上げ」(事業概要書)などに約45億円を使い、島根県松江市は2025年後期の朝ドラのモデルとなる小泉八雲と妻セツ関連ツアーの開催、奈良県も来年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』をテコにした観光誘致に交付金を使う。
「奈良県が大河ドラマの主要な舞台になるのは55年ぶり。万博が終了した後の誘客につながる大きなチャンス。ドラマが終了しても引き続き『秀長のまち』として奈良県の大きな観光資源となるよう、今年度から地元の機運醸成を図ります」(奈良県観光力創造課)
それなら国のカネではなく、県や市の独自財源でやるべきではないか。
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※週刊ポスト2025年8月1日号