いまでは実家の草刈りもAさんの仕事だという(イメージ)
今年4月、高年齢者雇用安定法が改正され、65才までの雇用が完全義務化されたが、「辞められるものならさっさと辞めたい」というのが大方のビジネスマンの本音ではないだろうか。ただし、辞めたら辞めたで想像し得ない生活が待ち受けていることもある。
都内に住む元会社員・Aさん(50代/男性)は、それほど積極的に働きたくなかったタイプ。早期退職の夢を叶えたが、「現実はそう甘くなかった」と吐露する。早まった決断を後悔するまでには、一体何があったのか――「早期退職」の現実を考える。
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無理なくお金を貯めることができ50代半ばで退職
埼玉県で生まれ育ったAさんは都内の大学を卒業後、システムエンジニアの道へ。就職先は中小企業で、年収もごく平均的なのに早期退職を実現できたのには、Aさんならではの事情があった。
「就職のタイミングと前後して母方の祖母が施設に入り、祖母が暮らしていた都内の実家が空き家になったんです。そこで、きちんと家を守ることを条件に、そこから会社に通うことになりました。家賃はゼロで、電気・ガス・水道・電話代なども実家持ちです」(Aさん。以下「」内同)
当時新卒のAさんが都内で一人暮らしをするとなれば、ワンルームの家賃が月6万~7万円はかかる見込みだった。それが浮くのは大きいが、それだけなら実家通いの会社員と変わらない。Aさんには副収入もあった。
「母の実家は築50年超ですが、立地は良いので、友人から空き部屋を貸して欲しいと言われたんです。母は『好きにすれば良い』というので、1部屋プラス納戸を使ってもらうことに。家賃は私が管理することになり、毎月10万円ほどが私の懐に入ることになりました」
無理なくお金を貯めることができたAさんは結婚して都内に家を買い、妻の実家の援助や収入もあってローンを完済。もうけた一人息子も社会人になった。「これでフリーダム」とばかりのAさんは、50代半ばにして退職。リタイア後は読書・映画鑑賞・将棋など、趣味をたっぷり楽しむつもりだった──。だが、そのプランは退職後すぐに崩壊した。