仕事の場合は「短所克服」から~「逃げちゃダメだ勉強法」
子供の場合は、「長所伸展」から。一方大人の場合は、「短所克服」を先に考えたほうが得です。
あなたは、人前で話すのが苦手で、文章を書くのが得意としましょう。短所は「話し方」で、長所は「書き方」ということですね。
会社でうまく仕事をこなしていくためには、短所の「話し方」を克服するのか、長所の「書き方」を伸ばすのか。極度の話し下手であるのならば、職場内でのコミュニケーションにも支障をきたしているかもしれませんし、顧客やクライアントを前にして、話が下手すぎては仕事になりません。「話し方」を物凄く上手にする必要はなくとも、平均レベルにまで引き上げることが、あなたの仕事力を高めることに大きく寄与するはずです。
「書き方」「文章」が得意というのも、もちろん磨きをかけることであなたの強力な武器になります。しかし、ビジネスパーソンの場合、得意な「書き方」で、不得意な「話し方」を穴埋めすることはなかなかできません。ですから、まずは「短所克服」を先にしたほうが、目立った自己成長と仕事上の成果に結びつくはずです。
もちろん長期的に考えると、「長所伸展」と「短所克服」の両方が必要ですし、両方をバランス良くできた人が大きく自己成長するでしょう。
あなたが何かを勉強しようという場合、常にそれは「長所伸展」なのか、「短所克服」なのかを意識するべきです。
そうはいっても、「短所克服」は簡単ではありません。「話し方が苦手」な人はよくいます。そうした人に、「今まで話し方教室に通ったことがありますか?」と尋ねると、「ない」と答えます。「今まで話し方についての本を読んだことがありますか?」と尋ねると、やはり「ない」と答えるのです。
「話し方が苦手」であれば、さっさと短所克服して、苦手意識をなくせばいいわけですが、ほとんどの人はそうした自分のコンプレックスに立ち向かうことができません。自分の短所、弱点、コンプレックスに立ち向かうことは、精神的に苦痛なのです。人間は自分の短所を克服することから、無意識に逃げるものなのです。
例えば、書店に行ったとき、「話し方」の本と「書き方」の本が並んでいた場合、あなたはどちらを手にとり、どちらを買うでしょうか。多くの人は、苦手分野はできるだけやりたくないものだから、得意分野の本を手にとってしまう。短所克服は苦しく、長所伸展は楽しいからです。
しかし、今、あなたにとって深刻な問題は「話し方」のはずです。でも、苦手意識のせいで「話し方」の克服から逃げたくなる。そんなときは、心の中でつぶやいてください。
「逃げちゃダメだ」
アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の主人公碇シンジは、エヴァンゲリオンに乗って出撃するときに、逃げ出したい衝動にかられます。そんなとき、恐怖と不安を乗り越えようと何度もつぶやく言葉が「逃げちゃダメだ」です。
あなたも、「逃げちゃダメだ」とつぶやいてみてください。自分の短所と向き合い、それを克服しようというときにわき上がる恐怖が打ち消され、今まで手にすることができなかった「話し方」の本を手にとることができるはずです。
自分の短所、苦手を常に意識し、それを「何とかしよう!」と問題意識を持つことができれば、後は楽です。長所よりも、短所のほうが伸びしろが大きいですから、結果は大きくドカーンと出始めます。そうなってくるとしめたもの。短所克服が「楽しい」に変わると、猛烈な自己成長のサイクルに突入します。
※樺沢紫苑著『勉強脳』(サンマーク出版)より一部抜粋して再構成
【プロフィール】
樺沢紫苑(かばさわ・しおん)/精神科医、作家。1965年札幌生まれ。札幌医科大学医学部卒。2004年から米国シカゴのイリノイ大学精神科に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信によるメンタル疾患の予防」をビジョンとし、YouTube(62万人)、X(26万人)、メールマガジン(12万人)など累計100万フォロワーに情報発信をしている。著書55冊、累計発行部数260万部のベストセラー作家。シリーズ累計100万部突破の『アウトプット大全』(サンクチュアリ出版)をはじめ、『読書脳』、『記憶脳』(サンマーク出版)、『神・時間術』(大和書房)、『ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)など話題書多数。