非上場のファーウェイに変わって注目を集めるAI関連の中国株とは(Getty Images)
トランプ大統領が「AI行動計画」を発表し、米中AI覇権争いが熾烈を極めようとしている(*関連記事《トランプ大統領が発表した「AI行動計画」の要点 内外に摩擦を招きながらもAI投資拡大は続く見通しで株式市場の支援材料に》参照)。そうしたなかで注目したい中国株の個別銘柄はなにか。中国株投資の第一人者・田代尚機氏がレポートする。
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息の長いAI相場がグローバルに広がるとすれば、米国とAI覇権を激しく争う中国の関連銘柄にも大きなチャンスがあるはずだ。
AI革命の期間について、オープンAIがChatGPTを公開した2022年11月を起点として社会、経済構造を一変させるまでとすれば、その期間は数十年に及ぶだろう。高い知能レベルのLLM、マルチモーダルAIといった人間の脳に当たる部分の進化がAI革命の核心である。これらが金融、医療、教育、公共サービス、流通サービスといった非製造業や、自動車、ロボット、各種機械設備などといった製造業に広く深く浸透し、世の中が一変する。
現在は、人間の脳に当たる部分の投資競争が始まったばかりである。LLM、マルチモーダルAIを開発する企業の売上はまだ小さく、彼らは業界での生き残り、将来の巨額の利益獲得を目指し、全力で先行投資を進めている。現在、利益を上げているのは、AI開発に必要な装置、すなわち、質の高い学習、推論に不可欠な最先端のAI半導体を作る企業である。
AI半導体において大きなシェアを持つエヌビディアが株式時価総額ランキングで世界最大であることが、その現状を雄弁に物語っている。
中国にとってもAIの発展は国策上の重要項目
エヌビディアがもっとも警戒するのはAMDではなく、中国の華為技術(ファーウェイ)である。ジェンスン・フアンCEOは7月、中国を訪問した際に「もし、我々が中国市場に存在しなくても、華為技術は必ず独自で解決方法を探し出すだろう」、「華為技術がエヌビディアを代替するのは時間の問題だ」などと発言、中国への半導体規制は米国にとって逆効果であるとの考えを繰り返し主張している。
ところが、トランプ大統領は7月23日、AI行動計画を発表、同盟国と歩調を合わせ、対中規制を強化しようとしている。“半導体チップ外交”を通じて親米国際グループを形成、米国技術の世界標準化を目指すと同時に、高性能チップに位置情報機能を加えることなどによって、厳格に中国本土への規制品の流入を抑え、性能を落とした製品を中国に販売することで米国の優位性を確保することなどを目指している。
米中追加関税措置の応酬を通じて、中国側によるレアアースの供給制限が米国企業にとって大きな障害になることがはっきりしているため、なりふり構わず対中規制を打ち出すことは難しい。とはいえ、AI覇権争いの敗北は、軍事、経済両面での致命的な劣後に繋がりかねない。トランプ政権は粘り強く、対中半導体規制を続けると予想される。
そうであれば、中国の半導体メーカーにとって、外国企業から国内市場を守られる形となり、独自開発に対する強いインセンティブが働く。中国にとってもAI産業の発展は国策上重要な項目であり、積極的な産業支援も期待される。