地銀が岐路に立たされている(イメージ。Getty Images)
「金利のある世界」で業績を拡大するメガバンク、台頭するネット銀行と対照的に、苦戦を強いられているのが地域密着型の地方銀行だ。業績の悪化を背景に、経営戦略の大幅な転換を図る地銀が目立ってきた。
全国各地の地銀で相次ぐ「隔日営業」
預金残高減少と地域経済の縮小などを受け、従来の銀行業務で苦戦続きの地銀は、支店の統廃合を進めると同時に、店舗外ATMの廃止や、窓口営業の時間短縮に踏み切るケースが全国で相次いでいる。
しかし、預金の引き出しや各種払込みなど、日常的に使っていたサービス低下に悩む顧客がいるのも事実だ。地銀利用者の60代男性が嘆息する。
「税金の払込みをするため徒歩圏内にある地銀の支店に赴くと、平日なのに閉まっている。聞けば、その支店は『隔日営業』になり、車で15分の距離にある別の支店と“日替わり営業”になったと言うのです。そのうえ昼を挟んで1時間も窓口を閉めるなど、以前に比べ、格段に使い勝手が悪くなっていると感じます」
隔日営業は全国各地の地銀で広がっている。
顧客にとって嬉しい施策に見えても“黄信号”
地銀の経営悪化で預金者や融資の利用者が不利益を被らないために、どんな対策が必要なのか。経済ジャーナリストの森岡英樹氏はこう指摘する。
「危ない地銀には、いくつかのシグナルが灯るので予見が可能です。不良債権比率の上昇が典型ですが、格付け機関による評価の低下も大きな目安となる。財務内容の悪化=資金調達が困難になっていることが把握できるからです」
一見、顧客にとって嬉しい施策の実施も“黄信号”の場合があるという。
「預金金利の引き上げも要注意です。戦略的に高金利で預金を囲い込みたいという“攻めの営業”のケースがある反面、資金調達で苦慮して個人の預金を集めることが死活問題になった場合も考えられるからです」(同前)
そのほか、上場している地銀では「株価急落」が最もわかりやすいシグナルだが、IR等で公開している財務指標も地銀の経営状況を知る上で必須の情報だという。
「有価証券報告書や決算資料、ディスクロージャー等で開示されている資料をぜひ見ていただきたい。地銀の資産で“有価証券運用が異常に多い”、しかも、“高利の海外の有価証券運用が異常に多い”場合は特に要注意です。国内での運用に苦戦した結果、海外に活路を見出そうとしているケースであることが多いからです」(同前)
地域に根付き、発展してきた地銀が岐路に立たされている。
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※週刊ポスト2025年8月15・22日号