日本の大学院留学を希望する中国人が増加している背景とは(写真:イメージマート)
「大学院生が中国人しかいない」──。いま、日本の大学の現場からはこのような声が聞こえてくる。2024年5月時点の「外国人留学生在籍状況調査」によれば、日本全体の留学生数は33万6708人で前年比20.6%増。そのうち中国からの留学生は12万3485人で、最多となっている(前年比+6.9%)。
大学院に目を向けても、留学生は年々増加している。たとえば東京大学大学院では、院生全体に占める留学生の割合が30%を超えており(2025年4月時点)、在籍する院生のほとんどが中国人留学生で占められている研究室も珍しくない。
シリーズ「中国人留学生だらけの日本の大学院」、第1回では中国人留学生を抱える大学院の実態と、日本への留学を希望する中国人が増加している中国国内の事情についてレポートする。【全4回の第1回】
「研究へのモチベーションが低い院生が多い」
都内の国立大学で勤務する大学教授のAさん(50代男性)は、自身の研究室に在籍する院生が、ここ数年でほぼ中国人だけになったという。
「2010年代半ばまでの私の研究室は、日本人院生が8割、2割がヨーロッパとアジア圏の留学生でした。2010年代後半から、韓国人と中国人が半数を占めるようになり、2020年代になると中国人がほとんどになりました。研究科全体を見ても受験者の7~8割以上が中国人ですね。これは私の研究室に限らず、都内の私立大学でも同じような傾向だと耳にします。
一部の国立大やトップ私大には、修士課程のあとに博士課程に進学し、母国か日本で研究者として大学に就職することを希望する人たちがいます。しかし、それは稀有なケースです。大学院に来る中国人留学生は、修士号取得後は母国に帰って就職を希望するか、日本で中国語を使って働きたいという人が大半です。
真面目に研究に取り組んでくれれば、もちろん出自はどこの国であろうと構いません。しかし、研究へのモチベーションが低い院生が多い反面、日本語指導などを含め、教員側の指導コストが高まっていることは問題だと感じています」(Aさん)