大学院に留学生が増加しても経営上のインパクトは小さい
少子化により留学生に依存セざるを得ない日本の大学だが、「中国人大学院生」の増加だけでは大学の経営上、大きなメリットはないという指摘もある。都内の私立大学に勤務する大学職員・Bさん(50代男性)が語る。
「大学によっては、18歳人口急減期を前に『留学生を経営基盤として確保しよう』という動きが出ています。とはいっても、大学院生の数は学部生に比べれば、ごくわずか。マンモス大学でない限り、中国人の院生が増えても大学経営に大きなインパクトをもたらすことはなく、むしろ教育や指導のコストが大きくなるだけです。
さらにいえば、大学院に来る留学生は将来的に日本で活躍する人ばかりではない。留学支援をして日本に呼び込んでも、結局、日本で得た知識や研究成果を携えて母国に戻ってしまえば、“知の流出”が問題となります」(Bさん)
斡旋する中国人留学生向けの日本語学校の存在
このような懸念があるなか、日本の大学院進学を総合的にサポートしているのが、首都圏を中心に存在感を示す、中国人留学生向けの日本語学校や進学予備校だ。
都内の私立大学に勤務する専任講師・Cさん(30代女性)は、留学生向け予備校ビジネスについて、次のように説明する。
「大学院、とりわけ日本の難関大学大学院への進学を目指す留学生の大半が、まずは留学生向けの予備校や日本語学校に入学します。都内では中国人に人気の高い早稲田大学がある高田馬場や、新大久保、新宿などに日本語学校が林立しています。高田馬場などの駅前は日本語学校の看板だらけですよ。
こうした学校では日本語の授業だけでなく、小論文の書き方や、研究計画書の作成サポート、面接のための会話の練習、さらには研究科や専攻分野ごとの専門的知識を学ぶ講座も設けられています。文系では経営学、MBA、経済学、会計、社会学、メディア、教育学、情報学、理系では電気電子、機械工学など、文理ともにクラスが用意されています」(Cさん)
Cさんによれば、予備校は中国人留学生と大学の橋渡しだけでなく、留学生同士をつなぐ役割も果たしているという。
「中国の大学が提携する日本の大学を推薦することもありますが、最近では予備校のチューターが『受験するならこの大学の研究科がオススメ』『この教授はこんな研究をしている』などと推薦することも多いです。
中国人留学生はSNSで広範囲につながっており情報交換も活発。日本語学校の生徒同士やOB・OG経由で、日本の大学院事情について口コミが広がることも多いですし、予備校のプログラムの一環として難関大学院に進学した卒業生と交流できるプログラムもあります」(同前)
経営上、中国人留学生を頼みの綱としている側面もある日本の大学。しかし、日々学部教育を行う大学教員にとっては、さらに中国人院生の指導が加わり、教育負荷が増している。続く記事では、指導に苦慮する大学教員たちの実態を紹介する。
(第3回に続く。第1回から読む)