空室率を下げるためには「管理会社の役割は大きい」という八木エミリーさん
「不動産投資」で大きな資産を築いた投資家は、その過程で様々な工夫を重ねている。元証券ウーマンの八木エミリーさんもそのひとりだ。八木さんは26歳の時に自己資金250万円で不動産投資を始め、その後10年余りで資産を9億円にまで増やしている。現在は子供の教育のためにタイに移住し、日本との2拠点生活を続けている八木さんは、株式投資などの金融投資と不動産投資の違いをこう語る。
「株式や債券、FX(外国為替証拠金取引)などの金融商品は、自分ではコントロールできない価格や金利などの変動に、自分が合わせていくしかありません。一方、不動産投資は自ら能動的にアプローチすることでコントロールできる要因がほとんどなので、努力次第でリスクを回避できるし、利益も伸ばせます。しかも、もし不動産バブルが崩壊して物件価格が下落しても、そこに住んで家賃を払ってくれる人がいる限り、痛くも痒くもないのです」(以下「」内は八木さんのコメント)
不動産会社への手土産とお礼状
不動産投資には売買で売却益を得るタイプと家賃収入で稼ぐタイプの2通りあり、八木さんは後者だという。できるだけ低い金利で融資を受けて優良な物件を探して購入し、空室が出ないように管理すれば、得られる利益は大きくなる。当たり前のように聞こえるかもしれないが、そうした過程のひとつひとつに投資家自身がかかわれることが大きいのだという。
「優良物件は“川上物件”と呼ばれていて、売りに出された瞬間、不動産会社は贔屓にしている顧客に紹介して買われてしまう。ですから、インターネット上の市場にはなかなか出てこないのですが、そうなると不動産会社といかに良好な関係を築くかが重要になります。些細なことですが、私は不動産会社を訪れる時は、手土産を持参しますし、お世話になったら手書きでお礼状を送ります。
私が働いていた証券業界は、手紙は巻紙に筆で書くという“巻紙文化”でしたから、便箋にペンで書くくらいは何でもありません(笑)。物件紹介のメールが来た時も、興味のない物件だと返信しない人も多いと思いますが、私は送ってくれたことに感謝するメールを必ず返信します。金融機関も同様で、顧客は私一人ではないので、数ある融資相談のなかで、少しでも気にかけてもらう、優先順位を上げてもらうことが大事なのです。結局、『人と人』だと思います」
“ちょっと仕事ができる感”が重要
八木さんは、以前勤めていた野村證券での飛び込み営業で、新人ながら営業成績で東海地方ナンバー1になり、史上最年少でセミナー講師を務めたこともあるという。菓子折や手書きの礼状、まめな返信も、いわば証券会社時代に培ったスキルだが、相手の担当者の気持ちがわかるからこそ、不動産会社や金融機関に対する気配りが自然にできたという。不動産投資は人間を相手にした“事業”だから、アナログな手法が意外に効果的なのだろう。
「たとえば相手が銀行の場合、面談が進むと、『次回は確定申告書3年分と、過去の物件のスペックとレントロール、決算書を用意してきてください』と言われます。融資の交渉を何度か経験すると何が必要かわかってくるので、最初から全部ファイリングして一括で持っていきます。そして、担当者に言われた瞬間に、いや、言われる前に『もう用意してあります』と提出する。こういう“ちょっと仕事ができる感”というか、“わかっている感”を出すのも大事じゃないかなと思っていて、事前に対応できることは何かを常に考えて行動してきました」