日本でも外国人受け入れに関する政府の基本方針策定に向けた検討が、ようやく本格化しようとしている。遅きに失している感もあるが、かといって性急な結論は出せない。人口減少問題に詳しいジャーナリストの河合雅司氏は、「まずは外国人の実像をできるだけ正確に知るべきだ」と主張する。独自のデータ分析に定評がある河合氏によれば、公表された統計からも驚くべき現実が見えてくるという。どういうことか──。【前後編の前編】
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鈴木馨祐法相が、出入国在留管理庁(入管庁)に中長期的な観点から外国人の受け入れのあり方を検討するプロジェクトチーム(PT)を設置すると表明した。経済や産業、社会保障、賃金、治安などについて日本社会への影響を調べ、受け入れ人数に一定の制限をかけることの是非などを議論する。
鈴木法相の私的勉強会がこのほどまとめた中間報告では「外国人の比率が10%台となったときに何が起こるのか。今のうちに真剣に考え、対策を講じておかなければならないのではないか」との課題認識を示した。入管庁のPTはこうした点も含めて、中長期的な観点に立った基本方針を検討する。
外国人政策をめぐっては、政府の統一方針がないまま大規模受け入れが進む状況が続いていることに国民の不満や不安が募っている。一方で、外国人排斥につながるような動きを警戒する声も広まっている。
世論は分かれており、外国人政策の基本方針の策定は難航が予想されるが、まずは外国人の実像を知る必要があろう。外国人の大規模な受け入れが日本社会に及ぼす影響はあまりに大きい。実像の解像度を高めなければ、適切な政治判断は下せないだろう。
外国人の実像は総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(2025年1月1日現在)でかなりうかがい知ることができる。まずは人数と日本人住民と外国人住民を合計した住民総数に占める外国人住民の割合の現状から確認しよう。
外国人住民の年齢構成。その中心は20~30代(総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(2025年1月1日現在)より)
日本人住民の年齢構成。少子化が進んでいることがわかる(総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(2025年1月1日現在)より)
住民基本台帳に記載されている外国人住民は367万7463人だ。前年より10.7%増えて35万4089人増となった。日本人住民は90万8574人減の1億2065万3227人だったので、住民総数に占める外国人住民の割合は3.0%ということになる。
ただし、来日する外国人の多くは就労目的であり、その中心は20~30代だ。一方、少子化の影響で、この世代の日本人の減り方は著しい。このため20代の外国人住民がこの年代に占める割合を計算すると、すでに9.5%に達している。30代前半を含めても8.8%だ。20代から30代前半に限れば、「ほぼ外国人10%社会」が到来しているのである。