「派手髪」はTikTokやInstagramで映えるため、Z世代を中心に人気を集めている(写真:イメージマート)
SNSでファンは増えるも「アンチ」で顧客が激減するリスク
原宿のシェアサロンで勤務しているBさん(女性・25歳)はSNSで7万人のフォロワーがおり、TikTokでもカット動画を発信しているスタイリストだ。彼女は「韓国風の派手髪スタイル」を得意としており、顧客にはK-POPのガールズグループのファンが多いという。
そんな彼女は過去にネットでアンチコメントを書き込まれ、精神的に参った時期があった。
「正直、同世代に比べてかなり収入は高いと思います。お客様の単価が高いし、ブリーチは根元が伸びたらすぐにリタッチでいらっしゃるので、お客様が途絶えることがないんです。トリートメントも最近では『髪質改善』系メニューが人気で、それだけで2万円程度。カット、カラー、髪質改善で1人7万円とか、そういうケースも珍しくないですね。ただ、SNSで集客することにはリスクも大きいです。私も過去にSNSにアンチコメントを書き込まれたこともあり、かなり落ち込みました」(Bさん)
Bさんによれば、ブリーチは髪の状態や履歴(過去の施術履歴)に仕上がりが左右される面も多いため、「失敗」のリスクも高いという。
「ブリーチは失敗が許されないので、常に緊張感があります。明るさや色味の仕上がりがほんの少し違うだけで、『イメージと違った、お金返せ!』とSNSに写真を上げられてしまうこともある。TikTokやXは拡散力が強いので、いわゆるインフルエンサー系のお客様に悪く書かれると一気に広まってしまうんです。
今は安定した収入がありますが、『常に監視されている』という不安もあるし、日々のサロンワークに加えて『帰宅したら動画編集しなくちゃ』『かわいいモデルさんを探さなきゃ』というストレスもある。体力的にも結構つらいです。とくに私はカットをほぼしない美容師なので、もしカラーのトレンドが終わったら自分に仕事はあるのか、先のことを考えると怖くなることもあります。
同じシェアサロンにいる40歳の男性スタイリストさんからは、『最終的にはベーシックなカットスキルがモノを言う世界。技術を磨いておきな』とよくアドバイスされます。SNS集客に依存しすぎず、基本に立ち返らなければ、長期的に顧客を維持するのは難しいと感じていますね」(Bさん)
派手髪トレンドはZ世代の若い美容師にとって追い風となり、SNSでの集客も容易にした。しかし一方で、カットなどの技術不足や、失敗がSNSで拡散されるリスク、トレンド変遷の不安など、華やかに見えるインフルエンサー系美容師にも将来の不安はつきないようだ。