太陽光発電には有利な条件が整っている新疆ウイグル自治区(Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。今回は、IT集積基地として発展する期待が集まっている、新疆ウイグル自治区の経済事情についてレポートする。
発表された「新疆デジタル経済発展戦略研究報告書」
輸出主導型経済では貿易に適した沿岸地域が発展に有利であったが、内需主導型経済への移行、インターネットを介して繋がるデジタル経済の浸透に伴い、内陸部の都市にも発展のチャンスが生まれようとしている。中国では、経済構造の大きな変化の中で、新疆ウイグル自治区(新疆)が将来、IT集積基地として発展する可能性が高まっている。
AI革命によって安価で大量の電力が必要となるが、その点で新疆の気候条件が適しているからだ。
中国は世界最大の再生可能エネルギー大国で2024年の発電量は2045TWh、第2位米国の2.5倍、第6位日本の13.3倍に達している(EI統計より)。現時点では、大都市圏に比較的近い内モンゴル自治区が国内最大の再生可能エネルギー発電量となっているが、辺境の地にある新疆も内モンゴルに次ぐ規模となっている。
新疆は国土全体の約6分の1の面積を占める中国最大の省・自治区・直轄市だが、典型的な大陸性気候で日照時間が長く、太陽光発電には有利な条件が整っている。また、風力資源も豊富であり、ダバンチェン(天山山脈の玄関口、新疆北部と南部の境界あたり)にはアジア最大クラスの風力発電基地がある。
データセンター建設に当たっては、AIチップの性能向上に伴い生じる発熱が深刻な問題となっているが、冬の平均気温が低く、夏の日中は酷暑となるが夜になると気温が大きく下がるといった新疆の気象条件は低コストの液体冷却装置の稼働に適している。
2025年第2回新疆デジタル経済イノベーション開発会議が9月5、6日、ウルムチで開催され、新疆ウイグル自治区デジタル経済連合会は「新疆デジタル経済発展戦略研究報告書」を発表した。新疆は中央アジアを経由して欧州に繋がる「一帯一路」の要所として、国家のデジタル経済発展のための政策実施、デジタル経済施設の海外との連携、産業協力、国境を越えたデータのやり取りにおいて、重要な役割を担うとしている。
デジタルインフラ設備建設では、ウルムチに国際的な情報通信ハブを建設し、デジタルシルクロードを作り上げ、電子新材料産業の集積基地を作り、ソフトウエア、情報サービス産業を発展させ、低空経済の産業育成に着手し、国際的なデータ保税区を構築するなどとしている。