地方での実家暮らしと都会での一人暮らし、ギャップは大きい(イメージ)
総務省「住民基本台帳人口移動報告」によれば、2024年の東京都への転入者と転出者は、差し引き約7万9000人の転入超過。このほか転入超過となった都道府県は神奈川、埼玉などで、コロナ禍で一旦止んだ大都市への一極集中の波が再び大きくなっていることがうかがえる。
なかでも注目したいのが、女性の動向だ。前出の報告によれば、なんと40道府県が女性の転出超過となっており、男性の2倍以上の女性が離れた県も存在するほどだ。転出する事情は様々だろうが、なかには、「地元に残りたくても残れない」という声も聞こえてきた。実際に地元を離れた女性のケースをもとに、考えてみたい。
激戦区だった地元の公務員になり、家族も大喜び
西日本の人口約5万人の市に住むTさん(50代/女性)は、「女性の就職先がない」と実態を赤裸々に吐露する。
「私が住んでいるのは、名産品や名所がほとんど何もない街。名の知られた大企業もなく、基幹産業もありません。学校を出て地元に残るのは、実家が自営業か農家の人ぐらい。地元の就職先は土木か建築、サービス業、介護系ぐらいしかなく、とりわけ女性は選択肢が少ない。唯一の激戦区が公務員で、これに受かれば“勝ち組”です」
そんな状況のなか、Tさんの長女は数少ない地元居残り組となる。大学は片道2時間近くの遠距離通学を4年間続け、就職は公務員を志望。15倍の倍率を突破して市の職員になったという。
「長女はいわゆるFランク大学出身ですが、高校は地元ではトップの県立校出身。役所はOBだらけなので、面接では大学よりも高校のことばかり聞かれ、最終面接では部活の顧問の先生の話で面接官と盛り上がったようです。Fラン大に通ったのも結果的には正解で、入試の成績が良くて特待生だったことをしっかりアピール。遠距離通学した苦労が実りました」
両親が喜んだのは言うまでもないが、もっと喜んだのが祖父母。可愛い孫が地元に残ると決まり、祖父は就職祝いとして通勤に使う新車を買い与えたという。