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医心伝身プラス 名医からのアドバイス

休職や退職に追い込まれることもある「慢性痛」 痛みと折り合いをつけて社会復帰を目指すための治療メソッドとは【専門医が解説】

慢性痛治療の最終目標は社会復帰(イメージ)

慢性痛治療の最終目標は社会復帰(イメージ)

 慢性痛によってビジネスマンが休職、退職に追い込まれるケースもあるが、病院に駆け込んでも原因がはっきりしないことは多い。痛みはありながら「仕事と治療を両立させる」、すなわち社会復帰を目指すには、どのような治療が必要なのか──。シリーズ「医心伝身プラス 名医からのアドバイス」、チーム医療で患者一人ひとりの「痛み」と向き合う慶應義塾大学病院痛み診療センター・小杉志都子センター長が解説する。【慢性痛治療の最終目標・後編】

目指すのは仕事と治療の両立

 痛み診療センターの治療目標は、慢性痛をゼロにするのではなく、痛みはありながら「仕事と治療を両立させる」、すなわち社会復帰を目指すことです。慢性痛は集中力や仕事の効率が低下させ、休職や退職に追い込まれることもあるからです。そのために有効とされるのが、医師や看護師、臨床心理士、理学療法士など、各科の専門家による多角的な治療のアプローチ、集学的治療的介入です。

 痛みを抑制する手段としては、神経ブロックと薬物療法があります。神経ブロックは、神経やその周辺に局所麻酔薬を注射し、痛みの伝わる経路をブロックすることで痛みの解消を目指します。痛みが緩和することで血流が回復し、筋肉のこわばりが減るなどの副次的効果も期待できます。

 例えば、交感神経の働きを一時抑制する「星状神経節ブロック」や神経の興奮を抑える「硬膜外ブロック」などがあります。また、痛みに原因がはっきりしない一次性疼痛の患者さんでも、自律神経にブロック注射すると痛みが緩和するケースがあります。リラックス効果で筋肉が緩み、痛みが緩和したと考えられます。ブロック注射を定期的に治療することで痛みが減少し、「励み」が精神的な支えとなってそのまま快方に向かう患者さんもいます。

 薬物療法では、鎮痛剤のほかに神経系に作用する薬、抗けいれん薬、抗うつ薬などを処方することで、痛みが徐々に緩和するケースもあります。ただし、現在アメリカで問題になっているフェンタニルといった鎮痛効果の高いオピオイド系薬剤の使用には、慎重を期する必要があります。アメリカでは2000年代初頭の施策「痛みの10年」(the Decade of Pain Control and Research)によりオピオイドの処方が容易になり、その結果として依存性が高いオピオイドの過剰摂取による死亡者増加、いわゆる「オピオイドクライシス」という深刻な問題が生じました。日本ではオピオイドに対する漠然とした恐怖感もあり、処方を希望する患者さんは多くありません。

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