「実家の売却」手続きのトラブルを避けるには(イラスト:イメージマート)
もし親が認知症になった場合、家族が苦労するのは医療や介護の側面だけではない。本人の意思確認ができないことで、行政や金融などあらゆる面で「手続き」ができなくなるのだ。いざという時では手遅れになる、事前に済ませておくべき手続きについて解説する。
権利証が行方不明に…実家処分前にやっておく「司法書士」との面談
認知症となった80代の父親が介護付き老人ホームに入居することになり、各種手続きに翻弄される東京都在住の会社員A氏(50代/男性)にとって、最大の難関となったのが「実家の売却」だ。
「空き家状態の実家をいつまでも放置することはできません。幸いなことに実家は駅まで徒歩5分の好立地で、査定の結果、築30年超でも土地と合わせて2000万円程度で売却できる見込みでした。法定相続人である弟とも合意できたので、“争族”の問題もなさそうだと安心しました」(A氏)
ところがそれも束の間、思いもよらぬ事態がA氏を待ち受けていた。
「実家の権利証(登記済証書)など売却に必要な書類がどこを探しても出てこない。これでは手続きを進めようがない、と頭を抱えてしまいました」(同前)
司法書士の村山澄江氏はこう助言する。
「可能であれば権利証や実印は紛失防止のため前もって子供が預かって管理しておくほうがいい。もし不動産の権利証が見つからない場合は、司法書士が本人と面談して『本人確認情報』という書類を作成することで代替できます。ただし本人の意思能力が確認できることが大前提です」