救済制度を把握しておく
仕事ができなくなり、収入が減ることも考えられる。埼玉県在住の60代男性は再雇用で働いていた64歳の時に妻が脳梗塞を患い、介護生活になった。
「共働きだった妻は仕事を辞めざるを得なくなりました。私も有給休暇を1週間取って看病しましたが、妻は日常生活に支障が出ていて、退院後も私が看なければならない時間が多く、なかなか出社できませんでした。自分の稼ぎと妻のパートの収入が一挙になくなって収入が激減し、そこに治療費と介護費がのしかかり家計が一気に苦しくなりました」
この男性のように、配偶者の病気がきっかけで仕事ができなくなるケースは多い。そうしたケースを想定し、いまからできることはあるか。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢氏が解説する。
「公的な救済制度を知っておくことが大切です。まずは5日間ほどの休暇を取得できる『介護休暇制度』があります。働く人が介護で休まざるを得ない場合に使える労働者の権利です。ただし、その間の給料は出ない場合が多いので有給休暇を使う選択肢があることも覚えておきましょう。
さらに介護が必要なら『介護休業給付金』が申請できる。在職中の休業であれば賃金の67%を最大93日分受け取れます。その間に地域包括支援センターを訪れて介護プランを策定するなど、今後の生活プランを立てて復職を目指したい」
介護認定を受けるには1か月ほどかかるため、その間の収入を支えるためにも必ず事前に把握しておきたい制度だと風呂内氏。雇用保険に加入している人は、まずは会社の人事に問い合わせることだ。介護のために一旦は離職を余儀なくされても、失業保険を利用すればお金をもらいながら再就職を目指せる。
「65歳未満の人で一定期間、雇用保険に加入していれば失業給付を受け取れます。65歳以上なら『高年齢求職者給付金』制度があります。求職する人に賃金の50~80%を30日または50日分一括で支給されます。退職前1年間で6か月以上雇用保険に加入している人が対象です。
今後、雇用保険の適用拡大により週に10時間以上働けば雇用保険に加入できるようになるので(2028年10月)、復職する人がパートの人でも使いやすくなります」(風呂内氏)