欧米の大学入試で重視される高校での成績
そもそも日本の大学入試の一般選抜は先進国の中でも特殊な形態だ。他の先進国、たとえば、欧米の大学入試は推薦入試型であり、高校の成績でどの大学に進学するかが決まる。
ビジネスで来日し、日本人女性と結婚して、いまはアメリカの企業から請け負った仕事をしている在日アメリカ人は「日本は暮らしやすい」と言いつつ、「大学入試制度には驚いた」と目を見開いた。
「自分の高校時代は成績を上げることが大学へのルートだと認識していました。ところが日本の大学受験は違う。うちの子どもは理系の国立大学へ進学したいんですが、そのためには学校の成績より塾や予備校でのペーパー入試対策が必要です。高校の学費はアメリカに比べると安いですが、塾代がかかります。受験の仕組みも僕は全然分からないので戸惑っています」
アメリカ人からすれば、日本の一般選抜、つまり一発勝負のペーパー試験で大学入試の合否が決まるのは信じられないことだ。それはカナダやイギリスでも同じである。
たとえばアメリカの場合、高校の成績はGPAと呼ばれ、0から4の評価点で表される。大学に入学するためには最低でも2.0以上が必要で、トップ100の大学なら2.7以上、トップ50の大学なら3.0以上が必要だとされる。
これらの成績で基本的に合否が決まるが、アイビーリーグなどの最難関大学ではGPAが4.0に近い高校生が大量に出願してくるため、SATという学力共通テストのスコアも求められる。要するに、最難関大学は高校の成績とペーパー試験の得点で合否を決めているわけだ。そのため高校生は、学校で良い成績をとるように努力する。
日本の高校からアメリカのアイビーリーグへの進学事情を取材していると、大学側は高校のレベルをしっかりと把握していることが分かる。開成や灘、渋谷教育学園渋谷といった最難関高校でオール5くらいの成績がないと合格は難しい。高校の成績でも評定と学校のレベルが両方見られているのだ。
一時期、灘からの東京大学理IIIの合格者数が減少した時期があったが、それは成績上位層が海外トップ大学へ進学していったからだ。