学習指導要領改訂で崩れた学力と評定の相関
なぜ、総合型選抜でも評定平均値4.0以上が出願要件になるかといえば、学力や勤勉さの担保ができると思われていたからだ。
一方で、評定平均値は出願要件だけではなく、合否を決める基準にもなりうる。
前回の記事で欧米の大学入試は、基本的に高校の成績で決まっていくと書いたが、日本の推薦入試も同じだ。指定校推薦なら校内選考の段階で評定平均値の高い生徒が有利になるし、総合型選抜も評定平均値が高い受験生が有利になることが多々ある。
現状の推薦入試、指定校推薦も総合型選抜も、実際のところは「この高校でこの評定平均値ならこの学力」という形で学力を測り、合否を決めるものだ。
ところが、この数年、大学は頭を抱えるようになっている。評定平均値で学力が測れなくなってしまったからだ。
なぜそうなったのか。2020年の学習指導要領改訂で、評定、つまり高校の成績をつける観点に「知識・技能」「思考・判断・表現」に加えて「主体的に学習に取り組む態度」が加わった。この「主体的に学習に取り組む態度」を客観的に点数化するにはどうしたら良いか。教師の主観で点数を決めれば、生徒や保護者から「不公平だ」といわれてしまう。そのため、「提出物を期限までにきちんと出す」といった客観的に把握しやすい要素が点数化されていく。
結果、多くの高校で真面目に課題を期日までに提出していれば評定平均値4.0がとれるようになっていった。学力と評定の相関が崩れ、評定平均値が学力の担保ではなくなったのである。
■第3回記事につづく:高校授業料無償化が引き起こす公立・私立高校の地殻変動 学力中位層以下はなぜ経済負担があっても私立高校へ流れるのか
■第1回記事から読む:大学入試がどんどん推薦入試にシフトしていく中で「ボーダーフリー状態」を避けるために大学側が重要視する指標
【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『ハナソネ』(毎日新聞社)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)、『東洋経済education×ICT』などで連載をしている。受験の「本当のこと」を伝えるべくnote(https://note.com/sugiula/)のエントリーも日々更新中。