推薦入試が主流になる中で、高校選びの基準も変化してきている
大学入試で総合型選抜などの推薦入試の占める割合が増えている。推薦入試では高校の成績の評定平均値が重視されることが多い傾向にあるが、評定平均値の内容も近年変化してきているようだ。それにより、高校の勢力図も変わりつつある。『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする。【全3回の第3回。第1回から読む】
* * *
大学入試の半分が推薦入試になる。受験業界では「今後は勉強が苦手な子でも“経験”で大学に行けるようになる」とセールストークを続けてきたが、ここにきて、それが事実と違うと分かってきた。というのも、キラキラした経験をさせて総合型選抜で大学進学を目指す学校の合格実績が微妙なことが見えてきたからだ。蓋を開けたら早慶上智に合格しているのは英検1級クラスの帰国子女だけという学校もある。
総合型選抜も推薦入試なので、実際は評定平均値で学力を測っていく要素が強い。ところが、2020年の教育指導要領で評定、つまり、学校の成績をつける観点に「主体的に学習に取り組む態度」が入りまじめにさえ取り組めば一定の評定が得られるようになったため評定平均値で学力が測れなくなった。
つまり、大学側は「この高校でこの評定平均値だからこの学力」と学力を測ることができなくなった。たとえば、総合型選抜に、大学側の視点で「見慣れない高校」の生徒が出願してきたから、その高校の難易度を調べると偏差値55と出てくる。偏差値55の高校で評定平均値が4.0あれば「十分な学力があろう」と判断して合格させたところ、実際には期待したほどの学力がなかった、というケースが増えてきたわけだ。
このような事態に、大学側は頭を抱えざるを得なくなる。SNSでは「最難関私立大学の総合型選抜の合格者は都内のお嬢様学校の子が多い。金持ちの子どもを入学させる制度だ」という趣旨の投稿も見られた。
しかし、お金持ちだからお嬢様学校の生徒が優遇されるわけではない。お嬢様学校の多くは成績の付け方がストイックで、「主体的に学習に取り組む態度」が評定の観点に入っても、定期テストや日々の小テストの点数を重視する傾向がある。そのため、そうした女子校で評定平均値4.0以上をとる生徒は、一般選抜でも合格できるだけの学力があると判断できる。したがって、これらの学校の生徒は総合型選抜で優先的に合格していく。お嬢様学校だけでなく、私立校は公立よりも評定平均値のつけ方が厳格なケースも多い。
