資さんうどんを堪能する筆者
オープン時の行列と、人気が長続きするかどうかは別の話
さて、こうした地方初出店時の行列は風物詩ではあるものの、その後の展開は店によって変わってきます。一斤550~600円の高級食パンチェーン「乃が美」がオープンした日に私は唐津にいなかったので行列ができたかどうかは分からないですが、ロードサイドのこの店、閉店しました。地元の知人は「まあ、高いしね」と言っていました。
その跡地にできた「ドミノ・ピザ」も閉店しました。やはり、ちょっと高かったのかもしれません。持ち帰りだとSサイズで790円からですが、元々ある「ピザ・カリフォルニア」は649円です。デリバリーになると当然高いですが、立地の面でも不利だったかもしれません。何しろ広大な唐津の中心街から遠すぎて、ピザが届く頃にはかなり冷めていたんですよね。ピザ・カリフォルニアは人口の多いエリアである唐津駅から徒歩5分ほどにあるため、持ち帰りもしやすいし、中心街に住む人はデリバリーでも熱々のピザを食べられる。ドミノ・ピザは私自身一番好きなピザのチェーン店ですが、この点でピザ・カリフォルニアを選んでしまいました。
あと、讃岐うどんチェーン店の「はなまるうどん」が出店した時、初期の頃は大混雑していたと聞きましたが、ここも閉店しました。そこに居抜きで入ったのが「資さんうどん」。やはり、北部九州のうどんの方が唐津の人々には味覚が合ったようで、いまでも連日大盛況です。正直はなまるうどんはウマいと思うのですが、根っからの九州っ子にとっては「なんか違うんや」という感想も出ていました。
このように、新規チェーンが登場するとお祭りのように人が集まるのが地方の性。だから、もしこれから「ジョナサン」や「山岡家」といったチェーン店が来たら初日は行列ができるでしょう。しかしその人気が続くかどうかは別の話。「やっぱファミレスはジョイフルだよね」やら「やっぱ佐賀のトンコツラーメンが食べたい!」みたいな話になるかもしれない。
これを「ケッ、田舎者が!」とバカにしないでほしい。というのも、振り返ると、2002年の「はなまるうどん」東京進出や2024年の「資さんうどん」関東進出時も行列はできました。はなまるうどんについては「かけうどん(小)100円」というギョーテン価格が影響したと思われます。資さんうどんについては、九州出身者が懐かしの味を求めたのかもしれません。
そういった意味で、人々は有名なものには一旦興味を示すものの、「自分には合わない」「コスパが悪い」と思ったら容赦なく切り捨てる。これまで「田舎者がこんな当たり前の店に行列を作ってるw」的に嘲笑する様子をネット上で見てきましたが、資さんうどんの関東の行列を見て「都会者も同じじゃねーかよ」と私は思いました。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。
