活動休止中だった松本人志の復帰の場としても注目を集めた
11月1日にスタートした「DOWNTOWN+(ダウンタウンプラス)」の躍進が目覚ましい。活動休止中だった松本人志の復帰の舞台となったこともあり、スタートから多くの会員を獲得している。はたしてDOWNTOWN+はサブスク市場にどのような影響をもたらすのか。イトモス研究所所長・小倉健一氏が、サブスク市場における消費者の支出構造について解き明かす。
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吉本興業が運営する有料動画配信サービス「DOWNTOWN+」の会員数が、受け付け開始から20日で50万人を突破したというニュースが報じられた。活動休止中だった松本人志の復帰の場として注目された結果とはいえ、この数字は驚異的である。月額1100円 という決して安くない金額を、50万人が支払うと決めた。これはもう、一部の熱狂的なファンやメディア関係者だけが動いた結果ではない。テレビを中心に活動してきたダウンタウンという存在が、若年層を含む一般消費者の「有料課金」というハードルを越えさせた ことを意味する。
私自身、その50万人のうちの1人だ。そして、職業柄という言い訳をしながら、無数のサブスクリプション(サブスク)サービスに加入している。文字メディアだけでも、「マネーポストWEBプレミアム」を筆頭に、みんかぶマガジン、ダイヤモンドオンライン、日経新聞、産経新聞、朝日新聞、読売新聞、そして海外のワシントンポスト、ニューヨークタイムズ、CNBC、ウォールストリートジャーナルを購読している。動画サービスは、Netflix、Amazonプライム、U-NEXT、そして今回の「DOWNTOWN+」の4つだ。
この「DOWNTOWN+」に加入する際、私の頭の中では即座に「計算」が始まった。実のところ、最近はNetflixもU-NEXTも視聴時間がかなり減っており、どちらかを解約しようかと考えていた矢先だった。かつてはスポーツ観戦のためにDAZNにも加入していたが、応援するヤクルトが弱いという単純な理由で解約した経験もある。
私のこの行動パターンこそ、現代のサブスク市場の本質を突いていると考える。つまり、「消費者の財布の総量はさほど変わらず、その限られた予算の中でサービスが奪い合っている」構造だ。
この感覚は、スマートフォンのホーム画面の整理によく似ている。私たちが日常的に開くアプリの場所、つまり「一軍」の置き場所(=消費者の予算総額)は限られている。新しいアプリ(=新規サービス)をインストールし、それをホーム画面の一番使いやすい場所に置こうと決めたなら、これまでそこにあった別のアプリ(=既存サービス)を、別のページに移動させるか、あるいはアンインストール(=解約)しなければならない。消費者は「DOWNTOWN+」という魅力的な新アプリのために、これまで一軍だった「Netflix」や「U-NEXT」のアイコンを、ホーム画面からスワイプで追いやってしまうかどうか、指をスライドさせながら迷っているのである。
