周囲からは「体力オバケ」と言われるという堀江貴文氏
運動は折れない心を養える
日々の運動はあなたのポテンシャルを全方位的に開花させる。運動のメリットはフィジカルの向上だけではない。メンタルに及ぼす効果も絶大だ。判断力や思考力、そして折れない心を養えるのである。
たとえば筋トレだ。筋力アップのためには筋肉に強い負荷をかける必要がある。強い負荷をかけて一時的に筋繊維を壊す。するとその回復過程で筋繊維がより太くなり、筋力が増すわけだ。だからもっとも効率的な筋トレは、筋繊維を徹底的に壊すことに尽きる。あなたの筋力の限界が100とすると、101まで出し切る。力尽きるまでやる。いわゆる限界突破(オールアウト)である。でも限界突破で悲鳴をあげるのは筋肉だけではない。それより先に心だ。心が折れそうになる。
数ある筋トレのなかで特にハードなのはスクワットだろう。スクワットの限界突破は本当にしんどい。僕も途中で何度も「もうここまで」とくじけそうになる。毎回そうだ。でも歯を食いしばる。気持ちを奮い立たせ、最後まで力を出し切るのだ。
筋トレは自分との戦いだ。それで鍛えられたメンタルはあなたの強力な武器になる。
仕事における勝負所や大ピンチ。どんな局面でもきっと乗り越えられるだろう。
運動は「ひらめき」のスイッチにもなる
ゴルフにいたってはまさにメンタルのスポーツと言える。ボールを打つとき、そのボールはつねに止まっている。誰も邪魔をしない。1打1打のすべてがあなた次第だ。ミスショットはしかたない。ただしそれで平常心を失ったら終わりだ。何が起きようと冷静に風向きやライを把握し、自分を信じて振り切る。それが勝者の条件である。
自分の状況を正確に見据え、仮説を立て、果敢にリスクテイクする――。ビジネスでの意思決定と同じだ。ゴルフを通してその判断力や決断力はいっそう磨かれる。
アドベンチャーレースは地図とコンパスだけを頼りに山を越え、川を下り、数日かけてゴールを目指す過酷な競技だ。時間が経つにつれ、疲労と空腹と眠気は耐え難いものになる。体力が問われるのは当然だが、それ以上に試されるのが思考の持久力だ。
道に迷う。チーム内で意見が割れる。レース中、そうしたさまざまなトラブルが頻発する。それでも焦りや苛立ちに呑まれず、正しい道筋を見出せるかどうか。極限状態における思考力が明暗を分けるのだ。
ゴールした瞬間の喜びは言葉では言い表せない。最高だ。そして数々の難局を克服できた事実は大きな自信になる。その自信は人生そのものを支えてくれる。
ここまで述べてきたような判断力や思考力、メンタルタフネスの向上だけではない。運動は「ひらめき」のスイッチにもなる。新しいビジネスのアイデアがまとまるのは机上ではない。往々にして体を動かしているときだ。特にランニングやエアロバイクといった単調なリズム運動の最中にその瞬間は訪れる。
呼吸が深くなり、血流が上がると、頭のざわめきが引いていく。凝こり固まっていた思い込みがほどけ、不意に新しい景色が浮かぶのだ。僕はそれを何度も経験している。
運動しよう。運動をしないのは損だ。なにもいつも限界突破しろと言いたいのではない。アドベンチャーレースに挑めと言うつもりもない。5分でいい。短いセットでもかまわない。汗をかくたび、メンタルは確実に強化され、研ぎ澄まされていくのだ。
【POINT】
自分との戦いに勝ち、スケールアップしよう
*堀江貴文著『体力が9割 結局、動いた者が勝つ』(徳間書店)より一部を抜粋して再構成。
(第1回から読む)
【プロフィール】
堀江貴文(ほりえ・たかふみ)/1972年、福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジンの開発や、スマホアプリのプロデュース、また予防医療普及協会理事として予防医療を啓蒙するなど、幅広い分野で活動中。会員制サロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」では、多数の会員とともに多岐にわたるプロジェクトを展開。『ゼロ』(ダイヤモンド社)、『多動力』(幻冬舎)、『時間革命』(朝日新聞出版)、『2035 10年後のニッポン』(徳間書店)など著書多数。
