研究開発から製造・販売まで一貫して中国で行なうビジネス戦略
チャイナリスクを減らし、中国市場でも稼ぐという「二兎を追う」したたかなビジネス戦略を取っていると評されるのがトヨタだ。
トヨタはこの春、研究開発から部品調達、製造・販売まで一貫して中国で行なう「レクサス(上海)新エネルギー」を設立した。
『経済界』編集局長の関慎夫が狙いをこう読む。
「日本のトヨタが国内で開発した車は欧米やアジアなどに輸出し、各国での現地生産も進める。それとは別に中国ではレクサス上海で独自にEVを開発して販売し、他国に輸出はしない。研究開発もサプライチェーンも“中国向け”と“その他の国向け”を完全に分けることで、結果としてチャイナリスクに対応できるし、巨大な中国市場も失わずに済む。こうしたビジネスモデルはパナソニックなどもやっています」
レクサス上海の設立についてトヨタに見解を求めると、こう回答があった。
「中国のお客様のニーズを織り込んだ車を迅速に提供するため設立された会社です。ご指摘の趣旨(チャイナリスクのために)で設立したわけではありません」(広報部)
電線メーカーのフジクラは、「固定費の削減と、生産拠点を珠海(メイン工場)に集約するため」(同社コーポレートコミュニケーション部)、2023年9月に中国で自動車用ワイヤハーネス(組み電線)製造を手掛ける拠点を1か所閉鎖したが、電線の製造技術をAI関連分野で応用し、データセンターで使う高電圧に耐えられるケーブルの供給を増やした。結果、AI関連市場の成長の波に乗って世界的に業績を拡大している。
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※週刊ポスト2025年12月12日号