副首都構想は人口減少社会の現実を見据えているのか(写真は人口戦略本部での高市首相/時事通信フォト)
現在、自民党と日本維新の会が法案作成の協議を進めている「副首都」構想。主導する維新の会は、副首都を「日本の経済成長を牽引する都市」と位置づけ、規制緩和や税制の特例措置、交通網の整備などを推進する素案を提示しているが、同党の拠点「大阪」がその候補地の最有力となっていることから、「露骨な我田引水だ」との辛辣な見方も出ている。いったい誰がための副首都構想なのか──。急速に人口が減少していく日本の近未来を分析した話題書『縮んで勝つ』の著者・河合雅司氏が解説する。【前後編の後編。前編記事から読む】
* * *
副首都構想を検討するにあたっては、もう1つ考えなければならない論点がある。人口減少社会における東京の在り方だ。東京もまた、いつまでも「現在の東京」であり続けるわけではない。
日本全体としての人口減少の進行とともに東京が衰退したならば、日本経済は大きく落ちこむだろう。そもそも副首都というのは、首都東京がしっかり発展を続けてこそ成り立つ。日本人人口が激減する中で、東京の国際都市としての競争力をどう維持していくのかを考えることのほうが喫緊の課題なのである。
前回記事でも指摘したように、日本人人口は毎年1%減のペースで減って行く。それはつまり、半世紀後には半減するということである。ここまで短期間で大幅な縮小に見舞われれば、東京も変質する。
東京も人口が減少し、その過程で高齢化が急速に進むことになるのだ。これまで東京は地方から若者が集まることで「街としての若さ」を保ってきたが、地方の若者が減れば、東京に流入する若者も減る。東京という街が「若さ」を維持してきたメカニズムの破綻である。
その予兆は、すでに東京一極集中の変化として現れ始めている。東京圏への日本人人口の転入の勢いに陰りが出てきているのだ。
