閉じる ×
閉じるボタン
有料会員限定機能の「クリップ」で
お気に入りの記事を保存できます。
クリップした記事は「マイページ」に
一覧で表示されます。
マネーポストWEBプレミアムに
ご登録済みの方はこちら
小学館IDをお持ちでない方はこちら
河合雅司「人口減少ニッポンの活路」

副首都構想が“国家の自滅行為”となりかねないワケ 人口減少社会で新たに「ミニ東京」を作って地方から人口を吸い上げる愚【人口問題のスペシャリストが警鐘】

「副首都」実現のための予算を地方の農業基盤整備に回すべき

 人口減少社会における東京の課題は「東京の内部」だけで起きるわけではない。今後の東京にとって最も深刻な課題となりそうなのが食料の確保だ。

 東京は、消費する農産物の大部分を地方圏での生産に頼っているが、生産地である地方圏で人口が激減するのである。それによって農業基盤が脆弱化すれば、東京への安定供給は覚束なくなる。

 だからといって、東京の内部でいまさら農地を確保し、東京に住む人々が食べていくに十分な量の農産物を生産することは困難だ。人口減少社会における食料確保の難しさは東京に限った話ではない。大都市圏と地方圏とは密接不可分な関係にあるということだ。
 
 こうした懸念があるのに、東京と「ミニ東京」たる副首都が同時に地方圏から人口を吸い上げる「二極集中」の状況をつくるということは、人口減少社会においては“国家としての自滅行為”だと言えよう。

 副首都構想を実現するには膨大な財源を必要とするが、そのような財源があるのならば、少ない農業従事者で生産量を増やせるよう地方圏の農業基盤整備への投資助成に回したほうが政策としてははるかに有効である。

 人口減少社会において求められているのは、東京一極集中の是正とか副首都構想といったピンポイントの政策ではなく、日本全体を人口減少社会に対応し得る仕様に改めることだ。それには、三大都市圏と地方圏を分け隔てることなく、各地域の「都市戦略」を策定する必要がある。人口減少社会において、首都や副首都、大都市だけが発展し続けるということはあり得ない。

 国土形成を“人口減少仕様”へと改めるためには、規模の大小を問わず、各自治体がその在り方を相当変えざるを得ない。とりわけ地方の中小規模自治体は大きな変化を求められる。各地の主要都市を中核として、周辺自治体の集落などをネットワーク化する商圏の形成が不可欠となるためだ。こうすることで、多くの地方圏の農業が維持可能となる。

次のページ:今こそ「人口が減っても経済成長し得る体制」への転換を
関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。