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中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

行き過ぎたクマ出没報道に警鐘を鳴らすネットニュース編集者の分析 「数字が取れるからといって、必要以上に煽って地元に経済的打撃を与えていないか?」

報道は適切な距離感をもって行うべきもの

 結局、上記ワールドカップにしても、五輪にしても、メディアが想定していた煽りは当たりましたか? ヨハネスブルクとリオデジャネイロで日本人の大きな被害はありましたか? ないんですよ。私は日韓大会のイングランドvsスウェーデン戦を生で観戦しましたが、試合前、浦和美園駅から埼玉スタジアムまでの道中、イングランドサポーターとスウェーデンサポーターは和気藹々としていましたよ。

 もちろん、本当に渡航が危険な国・地域はありますし、南アフリカやブラジルにもそれなりに危険なエリアはあるでしょう。それでも、普段からそこまで注意喚起しているわけではないし、なんなら、普段から日本に多く来ているイギリス人を危険視するようなこともない。

 結局、ワールドカップの注目度と組み合わせることにより、「世界最凶サポーターのイングランドのフーリガン」を強調したかったわけです。そして、何もなかったら「私達は最悪のケースを想定していました。何もなくて良かったですね(ニッコリ)」となる。

 クマ報道についても、一部ではそういった側面があるのではないかと思うのです。確かにクマは怖いです。でも、その怖さをことさら煽って、北海道・東北の観光・飲食業界に必要以上に打撃を与えるものであってはいけない。報道というものは適切な距離感をもってやるべきもの。楽観過ぎてもいけないし、過度な恐怖煽りもいけない。事実を淡々と伝え、それでいて出せば読まれるからといって、同じニュースばかりに拘泥し続けるのではなく、他に重要な話題があれば、そちらもきちんと取り上げる。それが報道のあるべき姿だと私は思います。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は稲熊均氏との共著『ウソは真実の6倍の速さで拡散する』(中日新聞社)。

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