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ビジネス

「何があってもキレたらゲームオーバー」サイバーエージェント・藤田晋会長が明かす、経営者として「忍耐力」を重視するようになった原点 競馬や麻雀にも通じる勝負眼

勝負師としての顔を見せる藤田晋氏(時事通信フォト)

勝負師としての顔を見せる藤田晋氏(時事通信フォト)

 競馬、麻雀、ポーカーなど、一見“運”に左右されそうなゲームにも、“強い人”が存在する。24歳で起業し、以来27年間事業を拡大してきたサイバーエージェントの会長・藤田晋氏もその一人だ。経営の節目ごとに勝負どころへ果敢に挑み、「勝負師」とも呼ばれる藤田氏が語る強さの核心は、長く耐え抜くための「忍耐力」にあるという。

 運が絡む場面ほど、感情に流されず耐え続ける力が長期的な成功を呼び込む可能性をもたらすという、藤田氏が勝負の本質を語った著書『勝負眼 「押し引き」を見極める思考と技術』より一部抜粋・再構成してお届けする。

運が絡むものにおいて忍耐力はとりわけ重要

 競馬ファンの期待を裏切るようなレースが続くと、馬主としての自分が否定されているようで落ち込む。「フォーエバーヤングが海外のすごいレース(サウジカップ)勝ったじゃないですか」とはよく言われるけど、それはもう遠い昔のような気がして……(編集部註・その後、フォーエバーヤングはBCクラシックを制覇)。

 先日、GIヴィクトリアマイルの日の夜に、私のボンドガールに騎乗してくれた武豊さんとご飯に行った。その日は馬が入れ込んでしまってレースにならなかったけど、豊さんの話で我にかえった。競馬ジョッキーのあらゆる日本記録を保持していると言っても過言ではない武豊さんでさえも、同じ感覚があるという。

「僕なんてすごい勝ってると思われてるけど実際は負けてばっかですよ」「土日1勝できないともう自分は終わったかなと不安が襲ってきて」「でも、その翌週に1勝すると何事もなかったように自信を取り戻すんですよ」。そして、「競馬はたまにいいことがある」と競馬の魅力を表現した。競馬で理想を語り合うのは楽しいけれど、なかなか理想通りにいかない。それがたまに現実になるのが競馬の面白いところだと。

 その話を聞いて、競馬はフルゲート18頭だとすると、18の陣営みんなが理想的な勝ちを イメージしてきていることを思い出した。単純に頭数で確率にすれば勝つのは18分の1だ。 そんなに低い確率を勝てると思い込んでいる方がおかしいのかも知れない。競馬は、最初は勝つのは難しいだろうと思いながら出走を決めても、レースが近づくにつれ、自分の馬にとって都合の良い情報ばかりに目がいく。それらを貪るように見ているうちに、いつの間にかかなり期待した状態でレースの日を迎えてしまう。そして自ら期待値を上げ、そこからの落胆を激しくしてしまうのだ。これを何度も繰り返しているとメンタルが持たない。

 そんな状況を高い視座で見守り、一喜一憂せず、グッと堪える「忍耐力」。人生のさまざまな目標を達成したいのであれば、最も身につけるべき力のひとつだと思う。仕事も投資もゲームもそうなんだけど、運が絡み、運の偏りが発生するものにおいて、忍耐力はとりわけ重要である。例えば麻雀は4人でやっている訳だから、毎回上がれるのは4人に1人だ。だけど、配牌から苦労して自分の手を整えていると、相手が先制リーチしてきても、せっかく整えた自分の手を崩すのは苦痛だ。だから降りたくない。ほとんどの人が欲望に負けて毎回のように勝負してしまう。それだけに、結局は忍耐力のある人が勝つのが麻雀だ。

 昨今、世界的にブームが加速しているポーカーも同様だ。日本の代表的なポーカープレイヤーの「世界のヨコサワ」氏は「ペイシェント(忍耐強い)」という言葉を好んで使っている。「オールイン!」と言って、後は天に運を任せれば気持ちいいけど、ポーカーも本当のチャンスが訪れる瞬間は決して多くない。理由なく勝負して、長期で勝てる人はまずいない。

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