首都圏では5人に1人が中学受験に臨む(イメージ)
首都圏では5人に1人が中学受験をする時代。日本の中学受験率は首都圏や関西圏を中心に上昇傾向で、特に首都圏において、2025年の中学受験率は18.1%と昨年に次いで2番目に高い数字となった。受験校選びにおいては、自宅からの交通の便や校風はもちろん、子供の将来的な進学を見据え、有名大学の合格者数や医学部進学率ランキングを熱心に調べる親も多いのではないだろうか。
とどまることを知らない教育熱だが、一口に中学受験といっても、その学校選びには変化が起きているようだ。意思決定方法を学ぶ『ミライの選択』プログラムに携わる河合塾学校事業推進部部長・山口大輔氏に話を聞いた。【全3回の第1回】
子供と対話し意向を聞く重要性
――中学受験をさせたいという親は、なぜ増えるのでしょうか。
山口:大前提として、そもそも中学受験は親の影響が大きいんですよね。そして、親世代の価値観の変化があります。
私自身は団塊ジュニア世代で、自分が子供の頃の親世代は学歴偏重。“いい大学”に行って、“いい会社”に入れば将来も安泰、という考え方がメジャーでした。そうした団塊ジュニアが親になると、どうしても学力こそが重要だと思ってしまう傾向はあると思います。
ただ現在、中学受験をする子の親が30代後半~40代だとすれば、勉強は大事だけど、勉強一本やりじゃないというように、緩やかに変化はしていると思います。その学校がどんな教育方針か、部活が盛んとか、理系に強いなど、子供に向いている要素がある学校を選ぶようにはなってきていると思います。つまり、親がどういう教育を受けてきた世代かで、子供の教育に対する価値観も変わるということです。
――受験して中学に入ったはいいものの、その後「やっぱり向いていない」ということにならないためには?
山口:選択する上で、親が子供の意向を聞いてあげること、対話することが必要だと思います。受験のなかでも中学受験で危ないのは、子供の意向が聞かれないままに進路選択がなされることです。さらに、もっとも怖いのは、本人も親が喜んでくれることを理由に軌道に乗って合格した後にこじれるケース。頑張って合格しても、通えなくなるケースが結構あるんですね。
加えて危なっかしいのは、第1志望に入って中高まで上がるパターンです。本来、幼少期から、「失敗しても大丈夫」「やり直しが効くんだ」という経験をしておくことはある程度必要だと思いますが、失敗したことがないとやり直しする経験もない。そうすると、大人になって何か失敗した時に立ち直る自分が想像できず、深みにはまりやすくなります。
