中学受験塾をどう選ぶのが正解か（イメージ）
中学受験での塾選びが本格化してくる時期となった。「塾選び」は難しく、子どもに合った塾を選ばないと、その後、親子ともども苦労をすることになってしまうという。実際に、塾選びに失敗してしまった親はどのような考えから、落とし穴にハマってしまったのか──。『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏が、中学受験塾選びの難しさについてレポートする。【全3回の第1回】
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中学受験で最も難しい関門は、塾選びだ。多くの保護者はこれを間違えてしまい、親子で苦労をする。なぜ、塾選びを失敗するか。
取材先である家庭教師がため息まじりにこう話していた。
「プライドが邪魔して適切な塾選びができない親御さんもいます。“お子さんに合った塾にしましょう”とお話ししてもなかなか聞き入れてもらえないこともあります」
今回は「プライド」が邪魔をして適切な塾選びをできなかった父親の例を紹介し、塾選びについて考えていきたい。
Aさん（52歳男性）は慶應義塾普通部から慶應義塾高校、そして慶應義塾大学へと進んだ。
「生え抜きの慶應ボーイですね」とこちらが言うと「生え抜きは幼稚舎から通ってい人たちです。うちらは庶民ですよ」と答える。
新卒で大手企業に入社して営業部署に配属になったが営業が肌に合わず、今は年下の部長が取り仕切る技術部署で事務的な仕事をしている。その部長は都立高校からMARCHという学歴だという。
「彼、高校受験と大学受験で慶應に落ちているんですよ。そのせいか上昇志向が強いんですよね。息子にはああいう感じの人間にはなってほしくないと思いました。ですから中学受験で慶應に入れたいと思いました」
選んだのは御三家専門塾
実はAさんの息子は小学校受験で慶應幼稚舎を受けたが不合格だった。慶應以外の小学校は受けさせなかった。
「地方出身者は見栄を張って私立小学校に通わせますが、分かってないですよね。私立は宿題や行事が多いから中学受験で不利になるんです」
息子には中学受験をさせ、慶應に入れると決めていた。中学受験で受験できる慶應の付属は3校。中等部と湘南藤沢、普通部だ。偏差値はいずれも65である（四谷大塚データより）。
「共学に入れたいという夢もあるんですよ。僕もカフェで女子と勉強したりしたかった。2月1日に抑えの学校を受験させて、2月2日は湘南藤沢、2月3日は中等部を受験させると決めました」
小学校の低学年では公文式と英会話、サッカーに通わせた。3年生の冬から中学受験の塾に入れた。選んだのは大手塾が展開する御三家対策ブランドのだ。生徒の半分が筑駒、御三家、駒東といった最難関校に合格している少数精鋭の塾だ。
「大手塾は幅広い偏差値帯の生徒を扱うでしょう。その点、あの塾はトップクラスの子だけが集まる塾です。それに合わせて、優秀な講師達も集まる塾なので最高の環境だと思いました」
