現代の食卓が抱える課題に応える新たなジャンルの商品(イメージ)
毎日の生活に追われるなか、「今日の夕飯、どうしよう」と頭を悩ませる人は多い。食事づくりは短時間で済ませたいが、デリバリーや外食だとどうしても食費はかさむ。忙しさと節約という板挟みのなかで、昨今注目を集めているのが「冷凍下味」という選択肢だ。
冷凍食品は、これまでも“忙しい人の味方”として家庭料理を支えてきた。それが近年は、完成品を温めるだけでなく、「下味をつけて冷凍しておく」という提案型の商品が存在感を増している。肉や魚を買ってきて、下味をつけて冷凍保存するという方法自体は家庭でも以前から行われてきたが、専用の「下味冷凍用調味料」は、その手間を圧倒的にラクにするうえ、家庭の下味にはない価値があるとして、急速に支持層を拡大しているという。各社商品はいかにして開発されたのか──。
女性の視点から生まれた“先進的な時短提案”
正田醤油の「冷凍ストック名人」シリーズ
下味冷凍という発想自体は決して新しいものではない。下味をした食材を冷凍する商品としては、正田醤油株式会社が2016年に発売した「冷凍ストック名人」が先行例だ。「タコライスの素」「キーマカレーの素」「タンドリーチキンの素」など、調味液入りチャック袋に肉を入れて揉み込み、冷凍することで、簡単に下味冷凍ができる。食べる直前、凍ったままフライパンで加熱するだけで完成だ。
同社マーケティング部の青田千恵子氏によると、2026年で発売から10周年を迎える同商品は、社内の女性社員で構成された「正田なでしこプロジェクト」から誕生した。
開発の背景にあったのは、育児と仕事を両立する女性をサポートする商品をつくりたいという思いだという。社内外の女性へのインタビューを重ねるなかで、「忙しくてスーパーには週末しか行けず、ひき肉を大容量パックで購入することが多い」「解凍してから味付けをするのが面倒」といった具体的な声に着目した。
こだわったのは、「子どもから大人までが一緒に楽しめる味と、お肉を用意するだけで食事のメイン料理が作れること」。そして、「帰宅してから、いただきますまでの時間をいかに早く、家族みんなが『おいしい。』と思う商品を提供すること」だったという。
「家事や育児、仕事と忙しい女性が料理をする際に、子ども向けの味と大人向けの味をそれぞれ作るのはとても大変です。子どもが食べられる味付けで、大人も満足できる味づくりを大切にしています。また、野菜やきのこ等を加えてアレンジすることも可能ですが、お肉だけでもメイン料理が完成できるようにしています」(青田氏)
下味をつけて冷凍さえしておけば、あっという間に主菜が完成する一助となる商品は、青田さんが「発売当初から、家族に料理を作っている女性からのご支持を得ています」とその手応えを語るように、女性の視点から生まれた“先進的な時短提案”だった。

