職場における「優越的関係」は、上司と部下の関係に限りません。パワハラとされる言動を受ける労働者がパワハラ言動をする者に対して抵抗や拒絶することができない蓋然性が高い関係であれば優越的関係といえます。部下が上司からの業務指示に対し、返事をしなかったり、舌打ちをする行動や言動は上司からよほど非常識な、それこそパワハラといわれかねないような指示を受けたのであれば別ですが、およそ職務上必要な対応ではありません。また、そうしたことをしばしば繰り返せば相当な範囲を超えています。そして、労働者が集団で、ある同僚を無視することもパワハラの一類型です。
あなたは上司ですが、部下から集団でこうした言動をされた際、彼らを叱責・指導して正すと集団で離反されたり、サボタージュされるなどの恐れがあります。そのような状況を避け、職務の円滑な遂行を果たすために部下の不正常な言動に抵抗や拒絶することができないといえなくもありません。
即ち部下たちは、あなたに対して優越的関係を背景としてパワハラ行為を行なっています。その結果、あなたのノイローゼが進行し、十分な働きができなくなれば『労働施策総合推進法』が禁止するパワハラとなります。
恥ずかしいかもしれませんが、快適な就業環境を取り戻すには、同法に基づいて会社が設置している相談窓口に持ちかけ、対処を求めることも検討してみてください。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2026年3月13日号