自転車に青切符制度導入で指導・取り締まりも(時事通信フォト)
4月から自転車の交通違反者に「青切符」制度が導入され、反則金が科せられるようになった。交通事故を減らすための取り組みではあるだろうが、はたしてこの制度が本当に市井の人々にとってプラスに働くのか。青切符導入による厳罰化の先にどのような社会が待っているのか。イトモス研究所所長・小倉健一氏が警鐘を鳴らす。
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自転車が厳罰化されたと聞いて、久しぶりに自転車に乗って街を走ってみた。その結果、強く感じた疑問があった。
例えば、靖国通りから両国橋を渡る道筋において、肝心な場所で自転車用の路面標識がふっと消えてしまうのである。道幅が変わり、自動車と一緒に走るべきか、歩道に行くべきか、ひどく迷う場面に直面した。道路の作りが極めて中途半端な状態のまま放置されているのである。
また、2日前に乗車したタクシーの運転手も不満を漏らしていた。自動車が自転車を追い抜く際、1.5メートルの距離を空けなければ安全運転義務違反に問われる恐れがある。ルールを律儀に守ろうとすれば、実質的に2車線の道路が1車線しか使えなくなり、結果としてあちこちで激しい渋滞が起きているという嘆きであった。交通事故による被害者を減らそうという目的自体は正しい。しかし、取り締まりを厳しくする手段に出るならば、確実な効果と生じる副作用を冷静に測定できる場合に限定するべきである。
警察や行政は自転車サイドの違反を声高に叫ぶ。だが、客観的なデータを見てほしい。令和6年中の自転車関連事故総件数は6万7531件であり、全交通事故に占める割合は約23.2%である。注目すべき事実は以下にある。自転車側が加害者側となる事故は1万6776件にすぎず、構成率にして24.8%にとどまる。裏を返せば、残る約75%の事故において、自転車側は被害者側なのである。
特に全体の8割を占める対自動車の事故においては、圧倒的に自転車側が被害に遭っている。事故の大部分で被害者となる立場の人々に対して、113種類もの細かな違反項目を設定し、現場の判断だけで反則金を取り立てる仕組みを作る。現状の厳罰化は、日々の買い物や子どもの送迎で自転車を手足のように使う主婦層を狙い撃ちにする、理不尽ないじめに近いものと映っても仕方がないのではないか。
自転車は、免許を持たない学生や高齢者、そして日々の家事に追われる主婦にとって、欠かすことのできない生活の足である。歩くには遠く、自動車を出すほどではない距離の移動において、自転車ほど便利な乗り物はない。
雨の日も風の日も、重い荷物を前後のカゴに乗せ、時には子どもを乗せてペダルを漕ぐ。名もなき人々の日常的な営みを、数字と法律の枠組みだけで切り取り、犯罪者予備軍のように扱う。それが青切符制度の正体ではないか。
