ナフサは「足りている」と強調する高市早苗・首相の投稿
供給網の途中で目詰まりを生む「4つの壁」
総量が確保されているにもかかわらず、なぜ産業の最前線で原料が枯渇するのだろうか。矛盾を解き明かす鍵は、供給網の途中で発生する『目詰まり(Bottleneck)』にあり、目詰まりを生む要因は大きく4つ存在する。
第1に、「物質の壁」だ。ナフサは単一の物質ではなく、産地によって成分が大きく異なる混合物である。ナフサにはパラフィンを多く含む種類や、芳香族と呼ばれる成分を多く含む種類があり、用途が全く異なる。基礎的な化学製品を効率よく作るためには、パラフィンを多く含む種類が強く求められる。
反対に、緊急で集められた原料は芳香族を多く含む種類が混ざっている場合が多く、設備に投入すると歩留まりが極端に悪化し、装置内部に不具合を引き起こす危険性すらある。単純な液体の体積だけを足し算しても、実際に使える分量とは一致しないのである。
政府は代替ルートで緊急調達した分を合算して総量として算出しているが、化学メーカーの視点で見れば、すべてのナフサが等しく使用できるわけではない。既存の設備で効率よく製品を作るためには、特定の成分を多く含む良質なナフサが必要不可欠となる。代替ルートで調達したナフサの成分バランスが設備の最適設定に合致しないケースが多発した。特定の用途や仕様に合致した原料が手に入らなければ、メーカーの既存設備は稼働できない。総量は確保されていても、品質の不適合が総量神話を崩壊させる要因となっている。
第2に、「価格の壁」がある。緊急の買い付けは運送費用の増大などを伴い、輸入価格を急騰させる。原料高は最終製品の価格に上乗せされるべきだが、日用品や建材などの市場では値上げに対する強烈な抵抗がある。高騰した原料を用いて生産しても、コスト上昇分を価格に十分に転嫁できない状況に陥る。赤字を出してまで市場に素材を供給し続ける義務は企業にはなく、生産を意図的に減らすことが財務的に合理性となる。利益が出ないことで生産がブレーキを踏み、結果として材料はあっても製品が作られない悪循環が生まれる。
