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ビジネス

《ナフサ危機》高市首相が「ナフサは足りている」と言っても現場では「足りていない」と悲鳴! 総量が確保されていても供給網の途中で目詰まりを生む“4つの壁”

 第3に、「物流の壁」である。日本では輸入元から製油所、商社、卸売業者、そして地域の中小販売事業者を経て最終的な需要者に至るまで、非常に多くのプレイヤーが介在している。どこか一箇所で足りなくなるかもしれないという小さな不安が生まれると、各自が少しずつ多めに注文を出す行動に出る。川下からの小さな需要のブレが、流通網を上流に遡るにつれて雪だるま式に増幅され、川上では巨大な需要の波として誤って認識される現象が発生する。

 情報を正しく共有する仕組みがないため、不要な混乱が勝手に拡大していくのである。将来の供給が止まることを恐れた企業が本来必要な量以上の発注に走り、局所的な在庫の偏りを持たらす。加えて、物流業界のトラックドライバー不足も事態を決定的なものにした。マクロな在庫が大きな港湾に存在していても、細分化して末端の現場に届ける物理的な輸送力が不足している。情報不足によるパニック買いと物流網の硬直化が結びつくことで、モノが流れない現象が完成する。

 第4に、海外の輸出規制の影響である。聯合ニュース(3月27日)では、《韓国政府 ナフサ輸出を全面禁止=「全量を国内へ」》と報じられている。

 日本の化学産業は、突発的な需要変動や成分の不適合を調整するための緩衝材として、隣国市場からの短期的な調達に深く依存していた。不足分を補うだけでなく、異なる成分のナフサをブレンドして品質を安定させる機能も担っていた。輸出禁止措置によって急に調整機能が麻痺し、代替ルートからの到着までの空白期間を埋めるはずの市場が蒸発してしまった。

 政府が算出した数字は計算上正しかった。しかし、同時に流通の複雑性を考慮しない机上の計算でもあった。結局、現場で足りていない以上、足りていないわけであるし、イラン情勢が沈静化しないことには抜本的な問題解決には至らない。

 今、政府が必死で目詰まりを解消すべく努力しているのはわかるが、政府発信は、正しくあるべきだ。「エネルギーが足りない」というと世の中がパニックになると心配している人もいるが、エネルギーが足りていないのに「足りている」と強弁して、政府が信用されなくなるほうが取り返しのつかない事態だと思う。

【プロフィール】
小倉健一(おぐら・けんいち)/イトモス研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立して現職。

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