親日演出だったのか(出光丸/写真=共同通信社)
ホルムズ海峡で再び緊張が高まり、韓国の貨物船がイランの攻撃を受けたとの情報が駆け巡った。
そうしたなか、異彩を放ったのが海上封鎖さなかにイランの「特別なはからい」で海峡を通過した日本のタンカー「出光丸」だ。
駐日イラン大使館はX(旧ツイッター)に「出光興産が所有する『日章丸』が行った歴史的な任務は、両国間の長きにわたる友情の証だ」と投稿。
イランの言う歴史的任務とは、1953年、一方的に石油国有化を宣言したイランを英国が海上封鎖するなか、イランと極秘交渉して石油を買い付けた出光興産のタンカー・日章丸の行動を指す。英国海軍の臨検をかいくぐりペルシャ湾を抜けて日本に戻ったことが、イランでは“大国に屈しない行動”として称賛されてきた。
軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏がこう見る。
「イランの目的は米国にいかにダメージを与えるか。EUでもフランス、イタリア、スペインが米国のイラン攻撃への基地提供や領空通過を拒否するなど西側の足並みが乱れている。日本にも米国と距離を置かせようという離間作戦が目的なのは間違いない。
イランの革命防衛隊などは70年前の日章丸事件についてはほとんど知らないと思われるが、それに絡めてタンカーを通過させれば日本を揺さぶることができるとイランの外務省が知恵を出したのでしょう」
実際、出光丸の通過をめぐってはイランとの外交関係を重視してきた日本外交の歴史がクローズアップされ、「イラン国民の対日感情も良好」と報じたメディアもあった。
だが、黒井氏は「メディアははしゃぎすぎ」と警鐘を鳴らす。
「日本は出光丸の通過後も米国と距離を置いたわけではない。その意味ではイランの狙いはうまくいっていない。“親日国だからこれからも通してくれるだろう”と考えるのは甘すぎる。
イランからすれば日本は韓国などと同様に、米国や英仏と比べて攻撃してもリスクの低い国だと考えている。そのため、今後、日本の船がイランから攻撃を受け、撃沈される事態もないとは言えないと考えておく必要がある」
今回の件をもって“イランは親日国”とはしゃぐのも楽観的過ぎるのだ。
※週刊ポスト2026年5月22日号
