Z世代の不安を解消するための教育のあり方とは(イラスト/井川泰年)
AIの急速な進化は、これからの働き方や教育にも大きな影響を与えようとしている。AI&スマホ革命による「第4の波」の中で、生き残るためにはどうすればよいか。これからの時代に求められるスキルと、大学の教育課程のあり方について、経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。
Z世代が抱える不安
前号(関連記事参照)では、若手社員とのコミュニケーションや部下の育成に苦労している管理職たちのキーワード「ちんげんさい」「おひたし」「こまつな」について論じた。
しかし「ストレスに弱く、すぐに離職する」と言われる当の若い世代=Z世代(日本では1990年代半ば~2010年代初め生まれ/おおむね現在16歳~31歳)は、彼らなりに不安や心配事を抱えている。
そのきっかけの1つは、2019年末から約3年半続いた新型コロナ禍だろう。Z世代の多くは中学・高校・大学時代に新型コロナ禍による閉塞的な環境に置かれ、通学してリアルの授業を受けることがままならず、自宅でのオンライン授業が中心になった。
このため、同級生や友達との交流はLINEやX、インスタグラムといったSNSが中心になり、実際に人と触れ合う機会が非常に少なくなってリアルなコミュニケーションが不足しているという。それは私が学長を務めているBBT大学の学生を見ていても感じる。Z世代は、気心が知れていていつでも悩みを相談できる“本当の友達”がいない若者が多いようなのだ。
Z世代以前のしらけ世代(1950年代~1960年代前半生まれ/学生運動が終わりを迎えた時代のノンポリ世代)からX世代(1960年代半ば~1970年代生まれ/バブル期や就職氷河期を経験した世代)、Y世代(ミレニアル世代=1980年代~1990年代前半生まれ/ゆとり教育の影響を受けた世代)までは、学校のクラスや部活、サークル活動などで気の合う友人と出会い、リアルな交流を通じて人間関係を構築するのが当たり前だった。
焼け跡世代(1935年~1946年生まれ)の私も、学生時代は友人たちと麻雀荘に通い詰め、夜な夜な新宿で安酒を酌み交わしながら口角泡を飛ばして濃密な付き合いをしていた。
しかし、Z世代はそういう経験をしていないため、対人関係に不器用で、上司とのコミュニケーションも潤滑にいかないのではないかと思う。
これはアメリカでも共通しているようで、『ニューズウィーク』(3月27日号/日本版4月14日号)は「GENERATION STRESSED(ストレス世代)」という特集を組み、Z世代(同誌によれば、アメリカでは1997年~2012年生まれを指す)、とりわけ女性たちが抱えるプレッシャーやストレスについてレポートしている。
たとえば〈アメリカの若い女性の3分の1が「ほとんど常に」将来への不安や心配を感じている〉〈かつては約束されていた未来が手の届かないものになっている〉〈正しい選択をしなくてはという強いプレッシャーがある〉〈「一度でも踏み外せばホームレスになるか、職を失うかも」という感覚に縛られている〉といった悩みを抱えているという。
おそらく、これは日本も同じだろう。私が接しているZ世代の学生たちは日本企業の多くが落ちぶれている現状に大きな不安を感じ、「大企業に就職しても生活は保障されないし、夢も持てない」というフラストレーションに苛まれているように見える。彼らがそう感じるのも理由がある。
