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医心伝身プラス 名医からのアドバイス

【関節リウマチ治療の最前線】朝起きた時に手や指が30分以上こわばっていたら要注意 早期診断・早期治療で「無治療寛解」も目指せる【専門医が解説】

痛みのタイプによって病気の種類は違う

痛みのタイプによって病気の種類は違う

21世紀に入って治療が劇的に進歩した

 1990年代後半までは関節リウマチの治療は入院安静でした。無理に動かすと悪化するため、関節に負担を掛けずに日常生活を送る訓練をする教育入院が当たり前だったのです。関節リウマチの有名人としては、画家のルノワールが知られています。指が変形して絵筆が持てなくなり、指に筆をしばりつけて名画の制作を続けたという逸話が残っています。

 しかし、ここ20年で治療法は飛躍的に進歩し、注射薬(生物学的製剤)や新規内服薬(JAK阻害薬)が開発され、治療2週間後には症状が緩和されるので入院はほとんどなく、また、車いすになる患者さんや人工膝関節、人工股関節になる方も減っています。現在の治療は普通の生活ができることを目標にしており、まず喫煙習慣や歯周病の治療、適正体重の維持の指導をします。そのうえで、基本的な治療は「メトトレキサート」の服薬が基本となります。

 メトトレキサートは1940年代に合成された葉酸代謝拮抗薬で、もともと白血病などに対する抗がん剤として開発されました。1980年代に関節リウマチに対する有効性が確立し、現在も治療の中心となっています。葉酸を抑えることで細胞の急激な増殖を抑える作用があり、関節リウマチにおいては葉酸を抑えるのに加え、炎症を起こす滑膜細胞を抑える作用も報告されています。服薬は1週間に1回6~16mgの範囲で調整し、早くて数週間、遅くても3~4か月で効果が出てきます。痛みが強い場合は、痛み止めやステロイド注射を痛みの箇所に使用することはありますが、ステロイドは昔と違って最小限しか使いません。

 副作用などでメトトレキサートが使いにくい患者さんに対しては、内服できる量のメトトレキサートを続けながら他の穏やかな作用の薬を足す方法で治療しています。また、日本では週1回7.5~15mgの皮下注射製剤が承認されています。皮下注射は飲み薬で出やすい消化器症状(吐き気など)が軽減され、効果も同等以上が期待できるという治療で、欧米ではかなり前から行なわれていましたが、日本でも2022年から実施可能になりました。メトトレキサートの注射は3割負担で月3000円程度と費用が安く済みます。

 生物学的製剤やJAK阻害薬といった新しい薬は非常に高い治療効果をもたらす一方で、3割負担の場合で1か月あたり数万円前後の費用がかかり、経済的な負担が課題となることがあります(JAK阻害薬は飲み薬ですが、費用は生物学的製剤と同等に高額です)。ただし、生物学的製剤の一部では費用を抑えられる「バイオシミラー(後続品)」を選択できるほか、高額療養費制度などを活用することで、負担を軽減しながら治療を継続できる仕組みもあります。

早期診断・早期治療で「無治療寛解」に

 かつては治らない病気と思われていた関節リウマチですが、発症早期の患者さんに対してメトトレキサートと生物学的製剤を組み合わせて治療すると、複数の臨床試験で約半数で寛解(症状がほぼおさまった状態)が得られ、その一部では薬剤を中止しても寛解が維持される(「無治療寛解」=いわゆる「治った」ような状態)ことが報告されています。私の体感としても、合併症のない患者さんについては、発症から3か月以内に治療を開始できた場合は、無治療寛解にいたる可能性が比較的高いと考えています。早期診断・早期治療が重要です。

 朝起きた時の手や指のこわばりが30分以上続く場合や、前述の「握手テスト」が陽性の場合、関節が3か所以上腫れている場合には医療機関を受診することが早期診断・早期治療につながります。

「関節リウマチは早期診断・早期治療が重要です」と語る萩野准教授

「関節リウマチは早期診断・早期治療が重要です」と語る萩野准教授

■前編記事から読む:【関節リウマチ治療の最前線】60代以上のシニア男性にも急増する関節の炎症はタバコや歯周病も一因に 似て非なる病気との見分け方が治療を左右する【専門医が解説】

【プロフィール】
萩野昇(はぎの・のぼる)/帝京大学ちば総合医療センターリウマチ内科准教授。2000年、東京大学医学部卒業後、都立駒込病院、東京大学医学部附属病院アレルギー・リウマチ内科などを経て、2011年6月より現職。米国リウマチ学会上級会員(FACR)。「裾野は広く、頂点は高く」をモットーに、長年にわたりリウマチ・膠原病診療に従事。豊富な臨床経験をもとに専門医療の発展と普及に尽力している。『ロジックで進めるリウマチ・膠原病診療』(医学書院)など著書多数。

取材・文/岩城レイ子

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