閉じる ×
閉じるボタン
有料会員限定機能の「クリップ」で
お気に入りの記事を保存できます。
クリップした記事は「マイページ」に
一覧で表示されます。
マネーポストWEBプレミアムに
ご登録済みの方はこちら
小学館IDをお持ちでない方はこちら
ビジネス
地面師連絡役カトウ

「現場にサツが来ているらしい…」積水ハウス55億円詐欺事件、地面師実行犯が語った“ドタバタ決済劇” 2億円の報酬を得た男が向かった「憧れの五つ星ホテル」での現実逃避

2億円を手にしたカトウは高級ホテルを転々

 カトウが手にした金は2億円。借金まみれの人生を送ってきたカトウにとって、この2億円はあぶく銭でしかなかった。

「金を手にした喜びよりも『大変なことをしてしまった』という思いしかなかった。皮肉なことに、その時初めて『もう悪いことには関わらないようにしよう』と思ったほどでした。それでもリッチな気分を味わいたくて、憧れのホテル、パークハイアット東京に逃げ込んだんです」

 カトウは2億円をホテルの室内にある金庫に隠し、部屋にこもった。一方、49億円もの額を1日で全額換金できるわけではないので、翌日も週明け月曜日も長谷川らと3人で目黒駅近くの銀行に行ったのだという。

 ようやく口座が差し押さえとなったのは、積水ハウスに東京法務局から申請書類の偽造などを理由に「本件登記申請の却下」の知らせが届いた6月6日のことで、残金はたったの「2719円」。時すでに遅しであった。

 積水ハウスが騙されたこの地面師事件は、新宿警察署に被害届が受理されるのが同年9月15日、さらに地面師メンバーの逮捕劇が始まったのが2018年10月と、事件発覚から1年以上もの時間がある。

 その間、カトウは都内の高級ホテルを転々としながら現実逃避していた。

「とにかく詐欺のことを忘れたかったので、デリヘル嬢を2人呼んで初めての3Pをしてみたりもしました。でも虚しいだけ。韓国のカジノ旅行にも1回行ったけど、金を湯水のように使ってもどこか冷めてる。常に焦燥感がありましたね。俺はいつ捕まるのかなって」

 地面師メンバーの逮捕劇が始まる前、主犯格のカミンスカスは警察だけでなくマスコミにもマークされていた。連日のように浅草のフィリピンパブで豪遊する姿を隠し撮りされ、報じられている。カトウはそのパブに呼び出されたこともある。

「小山さんが夜中に『今からおいでよ』って電話かけてきて。俺は酒も飲めないけど、呼ばれたら付き合いで行きました。小山さんも酒は飲めないのに、女の子には1万円札をちらつかせて一気飲みさせたりしてましたね」

 カトウは土井やマイクら地面師メンバーと、さながら社員旅行のような北海道のゴルフ旅行などにも出向いた。

「ゴルフは輪厚で、夜は小樽で豪遊しました。土井会長もマイクさんもみんな年上なので、気を遣いましたよ」

 2017年6月から年末にかけては金を湯水のように使った地面師たち。2018年10月にはカトウは地面師メンバーの中でも唯一自首し、12月までに主犯格らも含め10名が逮捕・起訴された。

 カトウは罪を認めたが、5名の主犯格らは獄中でも「冤罪」を訴えている。そのため大半の金の行方はわかっていないが、事件の“黒幕”が明かした残金の行方、地面師たちの救えない本性にも迫っていく。(以下次号)

第2回・前編から読むシリーズ第1回から読む

【プロフィール】
河合桃子(かわい・ももこ)/1977年、東京都生まれ。ライター。週刊誌を中心に執筆。幅広く取材活動を行なっており、特に性風俗にまつわる事件などアングラな業界を長年取材している。積水ハウス55億円詐欺事件の実行犯を取材した『地面師連絡役カトウ』で、第32回小学館ノンフィクション大賞を受賞。同書は6月18日に発売予定。

※週刊ポスト2026年6月19日号

関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。